「感覚器系」ユニット講義録9,10

月日(曜日) 時限 担 当 講義内容 SBOs番号
10月25日(金)
2
田 岡
体性感覚1 @-1,2,3
3
田 岡
体性感覚2 @-1,2,3

SBOs
@「体性感覚」
1)皮膚感覚と深部感覚の受容のしくみを説明できる。
2)体性感覚の伝導路を機能と関連づけて記述できる。
3)大脳皮質の体性感覚野の機能局在を説明できる。

体性感覚
1.皮膚感覚と深部感覚

 皮膚には外部からの機械的刺激や温度刺激、侵害刺激を受容する感覚受容器が存在し、適刺激が加わると受容器電位が発生する。受容器電位が閾値を超えると一次求心神経に活動電位が発生する。それが伝導路を伝わり中枢神経系で処理されると様々な感覚を引き起こす。このような皮膚に存在する受容器で受容される感覚を皮膚感覚という。一方、骨格筋や関節の機械受容器は関節の角度や運動に伴って、一次求心神経に活動電位を発生させる。これにより引き起こされる感覚を深部感覚という。

(1)皮膚感覚の受容器
 皮膚の機械受容器にはメルケル触盤、マイスナー小体、パチニ小体、ルフィニ小体、毛包器等があり、各々皮膚の変形に応答する。また、自由神経終末である温受容器と冷受容器は別個に存在する。痛覚を引き起こす侵害受容器も自由神経終末である。
 皮膚に存在する受容器の密度は体部位により異なる。手指や口唇等2点識別閾が優れている部位では機械受容器の密度も高い。

(2)深部感覚の受容器
 深部感覚の機械受容器は筋紡錘やゴルジ腱器官など骨格筋に存在する他、関節にも存在する。関節の位置や運動の検出に役立つのはこれらのうち、主に骨格筋の機械受容器である。

(3)痛覚と侵害刺激
 痛覚(侵害刺激)を引き起こす刺激は侵害受容器で受容される。これは他の機械受容器や温度受容器とは別のものである。従って、機械受容器が過度に刺激されても痛覚は生じない。

(4)一次求心神経
 皮膚の触圧覚や深部感覚の一次求心神経は太い有髄神経で伝導速度も速い(Aα線維とAβ線維)。一方、温冷覚の一次求心神経は細い有髄神経である(Aδ線維)。痛覚の一次求心神経は細い有髄神経(Aδ線維)と無髄神経(C線維)に分けられる。

2.体性感覚伝導路
 皮膚感覚や深部感覚などの一次求心神経は脊髄神経節に細胞体を持ち、脊髄後角より中枢神経系に入力する。
 皮膚の触圧覚や深部感覚の一次求心神経は脊髄に入った後、同側後索を上行し延髄後索核に終わる。二次求心神経は交叉し反対側内側毛帯を上行し視床後腹側核の一部(後外側腹側核の外側部、VPL)に入力する。これを後索―毛帯路系と言う。
また、温冷覚と痛覚の一次求心神経は脊髄後角のニューロン(二次求心神経)に終わる。ニ次求心神経は反対側前側索を上行し視床に入力する。これを前側索系(脊髄視床路)と言う。また、一部は網様体に終わるものもある。
 一方、三叉神経支配領域では触圧覚や深部感覚の一次求心神経(後索―毛帯路系に相当する)は主知覚核に入力する。その後、毛帯路に合流し視床後腹側核の一部(後内側腹側核、VPM)に入力する。温冷覚と痛覚の一次求心神経は(前側索系に相当する)脊髄路核に入力した後、視床へ投射する。

3.大脳皮質体性感覚野
 視床後腹側核群に入力した体性感覚情報は大脳皮質体性感覚野(一次体性感覚野)に送られる。体性感覚野は中心溝後方に位置し、中心溝に沿って内外側方向に広がる細長い領域である。この領域は場所により異なる体部位からの情報が処理される。これを体部位局在という。最内側部は反対側下肢遠位部(足)が再現され、外側に向かって順に、下肢近位部(下腿、大腿)、体幹部、頭部、上肢近位部(腕)、上肢遠位部(手指)、顔面、口腔が再現されている。手指や顔面、口腔領域など敏感な部分は再現領域が広くなっている。体性感覚野では対側の全身が再現されている(体部位再現)。
一次体性感覚野はブロードマンの3野、1野、2野からなる.3野は更に、3a野と3b野に分けられる.3a野へは深部感覚(筋紡錘)が入力し、3b野へは触圧覚が主に入力する。