塩酸パパベリンによる血管拡張術



 クモ膜下出血は本来脳脊髄液を満たすクモ膜下腔に血液が混入した状態をいう。外傷性クモ膜下出血以外のくも膜下出血の発生原因は脳動脈瘤の破裂によるものが第一である。一般に脳動脈瘤が破裂すると、流出した血液成分自体の刺激や血管内膜が破れたための刺激などにより、その近くの血管に血管攣縮が起こる。攣縮の程度が軽ければ無症状に経過するが強ければ血管の狭窄により脳虚血を起こし、脳梗塞をきたす。狭窄は主として破裂動脈瘤付近に発生するが、狭窄が広汎に拡がり反対側の脳主要動脈をもおかすことも稀ではない。これに対する処置として、攣縮を起こしている動脈に塩酸パパベリンなどの平滑筋弛緩薬を注入する治療法がとられる。図.1に動脈瘤破裂直後のDSA、図.2に左中大脳動脈ネッククリッピング後のDSA、図.3に塩酸パパベリン注入後のDSAを示す。M1部の狭窄が改善されているのが判る。

.1動脈瘤 .2狭窄部 .3パパベリン注入後