脳血流障害の症例における脳血液量（ＣＢＶ）の検討
ー臨床的意義ー

東邦大学医学部付属大森病院 中央放射線部
町田啓一　　大津元春　　　島田　豊


目的

脳の血流状態を表すと思われる脳血流量(Cerebral Blood Volume以下CBV)はその方法論も含めて検討の余地があるものと思われる。

ここではCBVを求める最も原理的な方法と思われるCBFに通過時間(Transit Time)を乗じて得られるCBVを算出しその臨床的意義について検討した。


原理　　　CBV=CBF×TT

CBV:Cerebral Blood Volume(%)
CBF: Cerebral Blood Flow(ml/min/100g)
TT  : Transit Time(min)
CBF
（Xe Dynamic CT）		 TT
（Perfusion CT）		 CBV
× ＝

方法
Xe Dynamic CT30%キセノン4分吸入、5分洗い出し

Perfusion CT
非イオン性造影剤30ml、9ml/sec急速注入

データ収集条件
120KV　200mA　1秒スキャン

使用機種
Ｘ線ＣＴ装置　 ＴＯＳＨＩＢＡ　Ｘｖｉｇｏｒ
脳循環血液量解析装置 安西メディカル製
非放射性キセノン吸入装置　 安西メディカル製
造影剤自動注入装置 根本杏林堂製　オートエンハンスA-50
　
使用薬剤
非放射性キセノン　　ゼノンコールド
非イオン性造影剤　　イオメプロール300


対象 　
Feb.2001-Aug.2002　　　　　平均年齢67歳　男性　38名　女性21名

Ｍｉｌｄ　ｃａｓｅｓ Ｉｎｆａｒｃｔｉｏｎ　　 ７
Ｓ．Ａ．Ｈ　　　 ７
Ｏｔｈｅｒｓ　　　　 ３

Ｍｏｄｅｒａｔｅ　ｃａｓｅ Ｓ．Ａ．Ｈ　 １３
Ｉｎｆａｒｃｔｉｏｎ　 ６
Ｉｎｔｒａｃｅｒｅｂｒａｌ　ｈｅｍａｔｏｍａ　 ３
Ｃｏｎｔｕｓｉｏｎ　 ２
Ｏｔｈｅｒｓ　 ６

Ｓｅｒｉｏｕｓ　ｃａｓｅｓ Ｓ．Ａ．Ｈ　 ６
ｈｙｐｏｘｉａ　 ３
Ｏｔｈｅｒｓ　 ４




計測部位

結果
計測されたCBVの値
正常例CBV 低酸素脳症例CBV

結果　　　得られたCBVの平均値と標準偏差


CBVとCBFの比較　（平均値の差の検定）

CBV CBF
Hemisphere
Temitory of anterior cerebral artery
Thalamus

黄色で示した組み合わせに関し
ては５％の危険率で平均値に有
為の差が認められた。


結語

１）脳血流障害が予測される症例について脳血液量（ＣＢＶ）を計測した。
２）重篤な症例に関してCBVは大脳半球、視床部においてその平均値に有意の差がみられた。
３）脳血流量（CBF)との比較ではより重大な状況の予測に対してよりsensitivityが高かった。
４）CBVの計測は短期的な予後の予測に有効であった。
５）ただしこの方法は操作の煩雑さと共に経済上の問題もあり、より簡便な方法の検討が必要であ 　ろうと思われた。