食道静脈瘤硬化療法


*食道静脈瘤は、門脈圧が亢進したさい認められる一症状である。食道粘膜に本来流れるべき量以上の血液が流れるために拡張した静脈が食道腔内に出現する。これが何かのきっかけで破裂すると、場合により数lもの血液が食道内に流れ、出血性ショック、肝不全などをひき起こし、予後不良となることが少なくない。
これに対する療法として、近年、非開腹的な内視鏡的硬化薬注入療法(EIS:endoscopic injection sclerotherapy)が行われている。

EISには2種類ある
@血管内注入法:おもに5%エタノールアミンオレイト(EO)を静脈瘤血管内に注入する。
A
血管外注入法:1%エトキシスクレロール(AS)を静脈瘤周囲に注入する。

 食道静脈瘤 画像 食道静脈瘤

施行手順
@ 内視鏡を挿入する。
A 穿刺部位を決定する。
B バルーン送気で1015mlを注入する。
C 血管内注入法の場合、X線透視下に5%エタノールアミンオレイトを静脈瘤供血路(左胃静脈が多い)が造影されるまで注入する(図1)。血管外注入法は1%エトキシスクレロールを12mlずつ静脈瘤周囲に注入する。
D  穿刺部位を装着バルーンで25分圧迫する。以上を静脈瘤が消失するまで1週間ごとにくりかえし行う。
E 食事は治療当日絶食とし、第1日目は水分のみ、第2日目より流動食、第3日目以降1日ごとに、三分粥、五分粥、七分粥、全粥とする。

*食道静脈瘤 esophageal varices

 食道静脈瘤は粘膜下層を中心とする静脈群が門脈、上大静脈間の側副血行路として用いられ血流増加、内圧上昇によりその径を増し蛇行屈曲を強め、食道内腔に突出することにより生じる。そのほとんどは肝硬変症、門脈閉塞などによる門脈圧亢進症の際、本来の経路である肝静脈へ流れるべき門脈血が食道静脈を経て、上大静脈に流入する上行性の流れを示すものだが、まれに縦隔腫瘍によって上大静脈や寄静脈の圧迫、閉塞で下行性の血流として食道静脈瘤が出現することがある。これをdownhill varicesと呼ぶ。

参考文献  放射線医学              編著 片山   発行所 文光堂
        消化管疾患の治療と看護      編著 三木 一正 西池 清美  発行所 南江堂