Dd-STATa標的候補遺伝子fdxAの解析

吉岡 かほり

　STAT (Signal Transducers and Activators of Transcription)は、サイトカインなどに応答する転写因子として哺乳類で発見され、JAK (Janus kinase)-STAT経路と呼ばれる細胞内シグナル伝達経路の最後に位置する。様々な種で広く保存され、発生、分化、細胞増殖、アポトーシスなど重要な生命現象を司っていることが知られている。細胞性粘菌では、4種類のSTAT遺伝子 (Dd-STATa, b, c, d)が同定されている。Dd-STATa遺伝子破壊株ではcAMPに対する走化性が鈍くなり、発生が移動体で止まり子実体の形成が見られない。このことより、Dd-STATaによって調節を受ける標的遺伝子は細胞の集合や子実体形成に重要であると推測されている。

　本研究で解析したDDB0190982遺伝子 (fdxA)は、マイクロアレイ法によってSTATa標的候補遺伝子として同定され、半定量的RT-PCRにおいてDd-STATa遺伝子破壊株で発現が低下すると確認されていた。本研究では、DDB0190982遺伝子 (fdxA)の遺伝子の機能解析を行った。まず、lacZレポーター遺伝子株を作製したが、染色が検出されなかった。さらに、DDB0190982遺伝子のすぐ上流に別のDDB0190983 (DDB_G0270344)遺伝子が近接して存在して、1つのEST がDDB0190982遺伝子のプロモーター領域に存在していた。そこで、2つの遺伝子にまたがるプライマーを用いてRT-PCRを行ったところ、転写産物を検出できた。このことから、fdxA遺伝子はデータベース上のDDB0190982領域とDDB0190983領域を含んだ1つの遺伝子であることが示され、データベースに誤りがあることを発見した。また、fdxA遺伝子破壊株とfdxA遺伝子ドミナントネガティブ発現株を作製し、2つのREMI変異株との集合期を比較したところ、DDB0190982領域とDDB0190983領域の間にコードされる領域にはストリーム形成に重要なドメインが、またC末端側のDDB0190982領域には集合時期を調節するドメインが存在することが示唆された。