MOMBhc-クロロホルメートの合成法

 

6-Bromo-4-chloromethyl-7-hydroxycoumarin (Bhc-Cl) (1)

100 mLナス型フラスコに、スピナー、Dean-Stark管(容量5 mLくらい)、還流冷却器(玉 付き)および塩化カルシウム管を取り付けた。4-bromoresorcinolを1.9330 g (10.23 mmol)、toluene 25 mL、ethyl 4-chloroacetoacetate 2.0 mL (15.00 mmol)、p-toluenesulfonic acid, monohydrate 225.0 mg (1.18 mmol)を順次加え、この溶液を攪拌しながら18時間150℃で加熱還流した。反応が進むと薄赤色の固体(生成物)が析出してくる。反応の終了は原料の消失をTLCで確認した。反応終了後、反応溶液を室温に戻し、toluene 2 mL、蒸留水25 mLを加えて氷上で撹拌した。その中にさらにn-Hexane 5 mLを加え、30分撹拌した。生成した沈殿を吸引濾過し、デシケーター内で乾燥した。桃色粉末の目的物を1.4237 g (4.92 mmol, 48.0 %)で得た。
TLC (SiO2)  展開溶媒:ジクロロメタン/メタノール=20/1、 Rf = 0.49
1H-NMR (270.05 MHz; CD3OD) δ=4.80(2H, s) 6.42(1H, s) 6.85(1H, s) 7.95(1H, s)

6-Bromo-7-hydroxy-4-hydroxycoumarin (Bhc-OH) (2)

1 Lナス型フラスコに、スピナー、還流冷却器(玉付き)を取り付けた。基質(1)を1.1440 g (3.952 mmol)と1N HClを300 mL加えて、140℃で加熱還流し4.5日撹拌した。反応の終了は原料の消失をTLCで確認した。その後反応溶液を室温に戻し、エバポレーターで溶媒を除去し、桃色粉末の目的物を1.0359 g (3.822 mmol, 96.7%)で得た。この反応はスケールアップ可能である。基質1 gに対し、1N HClを250 mL加えるのがポイント。
TLC (SiO2)  展開溶媒:ジクロロメタン/メタノール=10/1、 Rf=0.42
1H-NMR (270.05 MHz; CD3OD) δ=4.77(2H, s) 6.38(1H, s) 6.84(1H, s) 7.81(1H, s) ; (DMSO-d6) δ=4.70 (2H, d, J= 4.6 Hz), 5.63 (1H, t, J= 5.7 Hz), 6.27 (1H, s), 6.90 (1H, s), 7.84 (1H, s)
FT-IR (ATR) ν= 3365, 3087, 1686, 1605, 1233, 1091, 1035, 925, 876, 847
UV (KMops) λmax / nm (ε) : 365 nm (26500 M-1cm-1)

6-Bromo-7-methoxymethoxy-4-hydroxymethylcoumarin (MOMBhc-OH) (3)

50 mLナス型フラスコに、スピナー、塩化カルシウム管を取り付けた。基質(2)を622.0 mg (2.295 mmol)、脱水DCM 6 mL、chloromethyl methyl ether 226.6μL (2.984 mmol)とiPr2NEt 559.7μL (3.213 mmol)を順次加え、室温で25分撹拌した。反応の終了は原料の消失をTLCで確認した。0.5 Mクエン酸を加えることで反応を停止させ、クロロホルムで抽出した。そして、有機層をMgSO4で乾燥させ、溶液を濾過した。溶媒を減圧除去することで、目的物を633.0 mg (2.008 mmol, 87.5%)得た。
TLC (SiO2)  展開溶媒:ジクロロメタン/メタノール=10/1、Rf=0.56
1H-NMR (270.05 MHz; CDCl3) δ= 1.93 (1H, t, J= 5.9 Hz), 3.52 (3H, s), 4.86 (2H, d, J=5.9 Hz), 5.32 (2H, s), 6.52 (1H, s), 7.16 (1H, s), 7.70 (1H, s)
13C-NMR (67.80 MHz; DMSO-d6) δ= 56.23, 59.06, 94.80, 103.51, 107.49, 108.96, 112.75, 128.19, 153.51, 155.13, 155.76, 159.93
FT-IR (ATR) ν= 3508, 1703, 1604, 1267, 1158, 1095, 1083, 1032, 1009, 974, 894, 842

6-Bromo-7-methoxymethoxycoumarin-4-ylmethoxycarbonyl chloride (MOMBhc-chloroformate) (4)

トリホスゲンからホスゲンを発生させる方法
<必要な試薬> ・ Triphosgene (Aldrich) ・ AliquatR 336 (tricaprylylmethylammonium chloride) (Aldrich) ・ 脱水ヘキサン(モレキュラーシーブ4Aで乾燥)(和光純薬) ・ 脱水トルエン(モレキュラーシーブ4Aで乾燥)(和光純薬) ・ 脱水THF (和光純薬) <発生方法> サンプルビンにAliquatR 336を136.5μL (0.299 mmol)はかり取り、それを脱水ヘキサン4 mLで溶かす。耐圧ビン(20 mLサイズ、Hyperglasstor, THG-A2, TAIATSU Techno)にスピナーを入れ、その後Triphosgeneを1.513 g (5.101 mmol)入れ、ヘキサンに溶解したAliquatR 336を加える。耐圧ビンのパッキンを入れ、ふたを閉め、しっかりとペンチ等で密閉する。激しく1日(夏場:20℃以上)もしくは2日(冬場:10℃以下)攪拌することで、ホスゲンのヘキサン溶液が出来た。Triphosgeneは東京化成のものも用いたが、Aldrichのほうが形状が結晶であり、扱いやすかったので、Aldrichをお薦めする。

MOMBhc-chloroformateの合成法
基質であるMOMBhc-OHとホスゲン溶液を反応させる前に、耐圧ビン中の圧を下げる。実際の操作は反応30分前に、デュワーフラスコにメタノールを加え、そこに液体窒素を徐々に加えて、ガラス棒でかき混ぜた。ある程度液体窒素を加えるとメタノールが凍り始める(-65℃)。そこに耐圧ビンを入れ、30分程度静置した。その間に、20 mLのナス型フラスコに基質(3)を161.2 mg (0.511 mmol)、脱水トルエン2 mL、脱水THF 2 mLを加え、アルゴンガス雰囲気下0℃で撹拌した。30分後、耐圧ビンを開け、ガラスシリンジとニードルを使い、全てのホスゲンのヘキサン溶液を注意深くフラスコに入れる。終わったらすぐに、アルゴンガス雰囲気下にした。TLCでの反応の追跡は困難なので、NMRによる反応の追跡を行った。原料消失を確認したら、約30分間アスピレーターでホスゲンガスを失活させた。溶媒を減圧除去した後、ヘキサンとクロロホルム(1:1)の溶液を調製し、それを粗生成物に加え、スピナーで激しく攪拌した。そして、吸引ろ過し、沈殿を真空下で乾燥させることで、目的物を170.3 mg (0.451 mmol, 88.2%)得た。NMRによる反応追跡は1時間ごとに測定するのが目安である。以下に追跡方法を示す。パスツールピペットを使い、少量 の反応溶液を10 mLナス型フラスコに移し、クロロホルムを加えてピペット内の反応溶液を全て溶かした。溶媒を除去し、重クロロホルムでNMR測定を行った。
1H-NMR (270.05 MHz; CDCl3) δ= 3.53 (3H, s), 5.33 (2H, s), 5.42 (2H, d, J=1.4 Hz), 6.43 (1H, s), 7.19 (1H, s), 7.64 (1H, s)
13C-NMR (67.80 MHz; CDCl3) δ= 56.73, 67.08, 95.17, 104.19, 108.82, 111.77, 112.58, 127.27, 145.28, 150.62, 154.27, 156.74, 159.49
FT-IR (ATR) ν= 1756, 1719, 1603, 1273, 1164, 1151, 943, 921, 897, 853

参考文献

 

 


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