研究内容

4. 神経伝達を擬似的に再現する

ケージド神経伝達物質を脳スライスサンプルに適用して、電気生理学的手法と組み合わせることで、神経細胞間の情報伝達を光照射によって擬似的に再現して解析することが可能となる。代表的な神経伝達物質はアミノ酸である。アミノ酸をケージド化合物にするには2つの方法がある。光分解性のエステルとしてカルボン酸部位 を保護するか、光分解性のカルバメートとしてアミノ基部位を保護するかである。Bhc基のアミノ酸のケージとしてのscope & limitationを明らかにするために、神経伝達物質である各種アミノ酸のBhcカルバメート(Bhcmoc-AA)とBhcエステル(AA-OBhc)を合成した。ケージド化合物の性質を評価する基準の1つとして、光照射によるケージ解除反応の効率がある。ケージ解除の効率は、モル吸光係数(ε)と光反応の量 子収率(φ)の積、φεで表すことができる。照射した光をどのぐらいの効率で吸収して、さらにそれをどのぐらいの効率でケージ解除に利用できるかを定量 的に表した値である。もちろん、大きければ大きいほど効率が高いことになる。いずれのBhc-ケージドアミノ酸とも、UV光照射によってほぼ定量 的にアミノ酸を放出し、しかも1光子励起の光感受性の面でも申し分ない性質を持っていることが分かった。例えば、典型的な2-ニトロベンジル型のケージド化合物のFeは20-100程度であるのに対して、Bhc-ケージドアミノ酸のφεは300-900であった。実際、マウス脳のスライス上においても、Bhc-Gluを使うと従来の2ーニトロベンジル型Gluの1/5程度の光量 で十分であることが分かった。さらに、2光子励起と併用することで、神経細胞間の情報伝達を擬似的に再現することにも成功した。


お問い合わせ:東邦大学理学部生物分子科学科 古田寿昭
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