研究内容

5. 遺伝子の機能を光で制御する

生体における情報のやりとりの主役分子はタンパク質である。細胞内において、時期および部位 特異的に、任意のタンパク質の濃度を制御することができれば、細胞内シグナル伝達の機構の理解は飛躍的に深まるであろう。そこで、Bhcケージド化合物の応用の1つとして、遺伝子の発現を時期および部位 特異的に活性化することを検討した。サイクリックヌクレオチドのケージド化合物合成用に開発したBhc-ジアゾを用いることで、mRNAのケージド化合物(Bhc-mRNA)を合成することができた。Bhc-mRNAをゼブラフィッシュ初期胚に導入することで、任意のmRNAの時期および部位 特異的な発現をin vivoで行うことにも成功した(図)。同様な考え方でタンパク質レベルでの機能発現の光制御も可能となる。さらに、ケージド化合物の化学を拡張することで、任意の遺伝子およびタンパク質の機能阻害を行うことも可能になるであろう。もちろん、これまでの小分子のケージド化合物の化学を活かすこともできる。例えば、ステロイドホルモン等、核内のレセプターと結合することで転写 を活性化する分子をケージド化合物にすれば、任意の遺伝子の発現を転写レベルで光制御できるはずだ。これに関連して、我々は、コール酸類のケージド化合物の合成にも成功している。コール酸類は、核内にあるFXRのリガンドで、自らの生成を制御する遺伝子発現を調節していることが分かってきた。これをさらに発展させて、任意の遺伝子の発現を転写 レベルで調節する技術へ応用するべく研究を進めている。

 

 


お問い合わせ:東邦大学理学部生物分子科学科 古田寿昭
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