アメリカ大使館宿舎

ハリー・ウィーズ(1983)

アメリカ大使館宿舎は赤坂の超特等地に広大な敷地を構え、中には体育館などもあるのだそうです。館員の勤務先である大使館までは歩いて数分、ラッシュアワーを我慢する必要もありません。国力にものを言わせて特権階級生活を享受するという発想に、どこか植民地主義的意識を感じて釈然としないものが残ります。それに加えて、建設に際しては「できる限りアメリカの製品を使え」という要求があったなどと聞かされると、なぜそんな理不尽なことをと、さきほどの釈然としない思いははっきりとした怒りに格上げされるのです。

それはさておき、デザインに目を転じると、これはなかなか面白いと言わざるをえません。そしてその面白さは、変化を持たせて画一性を避けるということにあるのだと思います。写真手前の低層部を見ていただきますと、いちばん右と右から3番目はたぶん同一デザインですが、真ん中のものは、窓の配置などが異なっています。こんどは、奥の高層部に目を移し、よ〜く見てください。窓やバルコニーの配置、建材の区切れ目を示すものと思われる縦や斜めの線などに関して、完全に同一のブロックを見つけることは難しいでしょう。

こうした多様性は、特に機能上の必要性から生じたものではなく、ある種の「遊び」であるに違いありません。こうした「遊び」を取り込むことが、コストにどれくらい跳ね返ってくるのか、私は知りませんが、「住んで楽しい」集合住宅を造る上で、その重要度はきわめて高いと思うのです。

アメリカ大使館宿舎

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