グランドプリンスホテル京都

村野藤吾(1986)

「2007年4月1日より京都宝ヶ池プリンスホテルは『グランドプリンスホテル京都』に生まれ変わりました」だそうですが、勝手に生まれ変わらないでほしかったものです。「名前」はいわばブランド力の源泉であり、同一の名前を保ち続けてこそ、「あのホテル」という意識がお客さんにも芽生えるのではないでしょうか。伝統や格式も、名前あってのもの。「『宝ヶ池プリンス』もそろそろ飽きられてきたから、ここらでひとつ『グランドプリンス』に変えてみようか」などという思考回路では、「やっぱり所詮プリンスね」と軽く見られますよ。

村野の設計したホテルでは、晩年の箱根プリンスや新高輪プリンスが有名ですが、こちらはそれらよりもさらに遅く、彼の死後に完成されました。曲線の有機的なところがいかにも村野風で、ドーナッツ型の形状が、コンパスで描いたよりはフリーハンドのような印象を与えるのはさすがです。他方、いまひとつと感じられるのは外壁の仕上げで、凝ってはいるもののちょっと安っぽいと言いますか、石造り風のわりには軽やかで重みに乏しく、悪く言えば表面だけを貼り付けたような印象がなきにしもあらずです。

隣接して、大谷幸夫の傑作、国立京都国際会館があります。村野と大谷では、生年にしてちょうど一世代の開きがありますから、つい、ホテルが先にあって国際会館が後にできたと思いがちですが、さにあらず。建てられたのは1986年と1966年、逆に一世代の差がついています。しかし今見比べると、どちらも同じくらいの年月を経たように見えるのですから不思議なものです。

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