飯田市美術博物館

原広司(1988)

原による横長大規模建築としては、ヤマトインターナショナルと並ぶ初期の作品です。京都駅ビルなどにつながる一連の作品群の、原点をなすものと言ってよいでしょう。原が育ったここ飯田市は、中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷にあり、風光明媚で空気のきれいなところです。この作品は、屋根がアルプスを模して山脈のような形をなしていたり、雲の形のオブジェが配置されていたりと、置かれる場所の地理性への意識を感じさせます。内部は円柱が立ち並び、一見したところあまり日本的ではありませんが、これには垂直の線を強く意識させる効果があり、やはり、山と谷の織りなす垂直の次元に支配されたこの土地との調和を志向しているのです。その意味では、きわめて具体的でわかりやすい作品で、ちょっと発想が単純すぎはしまいかと心配にすらなるほどです。昨今の、ほとんど得体の知れない巨大性を帯びた彼の作品が、こうしたところに出発点を持つというのは興味深いことと言えましょう。

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