岩田学園

磯崎新(1964)

私は磯崎という建築家がどうも苦手で、ポリシーがないというか、求心力のない作品ばかり作る人という印象があります。

ところが日経新聞に掲載された『私の履歴書』を読んで、彼は演劇などの前衛芸術運動に積極的に参加した人物であり、つまり既存の権威や理念を打ち壊すことに非常な熱意を持った人であることを知りました。そして実際彼の前には、丹下健三という、権威と理念の権化のような人間もいたわけです。他方、ではその打ち壊したもののあとに何を創るかとなると、磯崎は終生、さほど明確なヴィジョンを持ちえなかったように思います。それが彼の作品に、いささか散漫とも言うべき傾向をもたらしているのではないでしょうか。まあ人の才能はそれぞれですから、創るより壊す方が得意という者もいて当然でしょう。

しかしこの岩田学園は、二棟の建築物が互いに呼応しつつ向かい合い、いつになく強い求心力を感じさせる作品です。その意味では、あまり磯崎らしくないとも言えましょう。

岩田学園岩田学園

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