出雲大社庁の舎

菊竹清訓(1963)

菊竹の出世作です。ですが私にとっては、どちらかと言えばがっかりした部類に入ります。ここに行ったときには、隣接する建物が建築作業中だった上にあいにくの雨天で、見た目がまるでぱっとせず、写真もまともなものはとうてい撮れませんでした。しかし、仮にもっと条件がよかったとしても、やはりそれほど感動することはできなかったでしょう。

まず、あまり大きくない、ということをもって難点とするのは気の毒かもしれませんが、とにかく私が期待したより二回りほど小さく、残念でした。コンクリート建築はそれなりのスケールがないと、人を圧倒する重量感を得ることは難しいのかもしれません。

次に、ディテールがそれほど美しくない、と感じたのは、もしかすると雨に濡れていたせいかもしれませんが、壁面に施された文様的なデザインに、手で触れたくなるほどの魅力はありませんでした。触覚に対する徹底的なこだわりは、たぶんないのでしょう。

とはいえ、出雲大社という特殊な空間に置かれるものとして、これはどうか、と言われれば、かなり成功しているように思われます。少なくとも、槇文彦の造った島根県立古代出雲歴史博物館が、そこにある必要性をあまり感じさせなかったのと比べて、こちらは大国主命まで遡る悠久の歴史と、なかなかいい勝負をしています。

出雲大社のサイトによると、これは「出雲地方の独特の刈り取った稲束を懸け干しておく『はでば』の形」なのだそうです。「はでば」の実物を見たことがないので何とも言えませんが、この外壁の意味ありげな勾配と、窓のない閉鎖的なつくりを見ただけで、ヴァーナキュラーなにおいを強く感じます。伝統的な形象を取り込みながらコンクリートの建築物を造るという発想は、丹下健三の香川県庁舎や大谷幸夫の国立京都国際会館など、この時代の代表的諸作品に通じるものと言えるでしょう。

ところでこれは、「いずも・おおやしろ・ちょうのや」と読むのですよね。どなたか教えてくださると助かります。

出雲大社庁の舎

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