宮城県図書館

★★

原広司(1998)

仙台市泉区にある県立の図書館です。公共の施設ですから、誰でも入れます。実際、受験生や親子連れなど、多くの人に利用されています。建築がお目当ての見学と写真撮影にも、快く応じてくれました。市街地を北に外れた郊外で、環境のよいところです。南から車で近づいてゆくと、緑の中に忽然と出現する、銀色の宇宙船のような物体がこの図書館なのです。

この作品は、原の一連の横長大規模建築のひとつです。他の作品との相違点といえば、単なる横に寝かせた直方体ではなく、南側に曲面を持たせた形状を有しているところでしょうか。さらに、図書館の真下に位置する階段状のピロティ空間は、野外劇場として使うことを意図したのかもしれません。これは「地形広場ことばのうみ」と呼ぶのだそうです。ですが、いささか薄暗いのに加えて、上に建築物があるのが重苦しく、「地底広場」の感もなしとしません。

ところでこの図書館、2003年の地震では、おびただしい蔵書が床に散乱し、壁のガラスも割れ、しばらくのあいだ休館を余儀なくされたそうです。地震対策をなおざりにした未来派建築とは笑えないと思っていたら、2006年には別の災難が降りかかりました。エレベータが、死亡事故を起こした件の「シンドラー製」だったのです。こちらはどうなったんでしょうね、その後。たしかに原の作品には、作者のイメージがはるかに先行して、建築物の利用に関わる実質的な面がついていかなくなる傾向のあるような気もします。むろん、エレベータの件は、彼のせいではありませんが。

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