大分市庁舎

日建設計(1978)

大分県は磯崎新の故郷で、大分市内にもいくつかの作品が残っており、この大分市庁舎のすぐ背後にも、初期の傑作と言われる大分県立図書館が、大分市アートプラザと名を変えて建っています。また大通りを挟んで斜め反対側には、庁舎建築の大物と言われる安田臣の代表作のひとつ、大分県庁舎がそびえています。さらには隣接する大分城址公園にも、たいそう立派な堀や石垣が残っていますから、よく見ればこのあたりは結構な建築物激戦区なのです。

そうした中にあってこの大分市庁舎は、知名度こそ劣るかもしれませんが、実力では一歩も引けを取らない堂々たる作品です。実際、1979年のBCS賞を受賞しているそうです。私はこれを見たときすぐに、高松市の百十四ビルを思い出しました。第一に色調が似ているのと、そしてそれにもまして、均質的でのっぺらぼうな近代的オフィスビルであることをよしとしない、有機的な表情のようなものを作品全体に感じたからです。偶然かと思って調べてみると、どちらも同じ日建設計の作品でした。尤も両者は10年余りの年月を隔てているので、設計に携わった人がどの程度重複しているかは知るすべがありません。

私がこの作品で特に気に入ったのは、直線的な要素と曲線的な要素のバランスがよいことと、そして何よりもこの外壁の質感です。素材は何らかの鋳物だと思うのですが、重量感があり、鈍い輝きがあります。しかもそれが、凹凸のパターンに若干の不規則性があることと、そして色彩も一様ではなく相当のむらがあることによって、多分に有機的な印象を与えています。とりわけ夕刻など、斜めから光が当たると、縦の線が強く感じられて効果抜群です。無機質であることを意図的に狙ったような、隣のコンクリートの磯崎作品とはよい対照をなしており、それも計算のうちかもしれません。地味と言えば地味な話でしょうが、こういうところに工夫を凝らすという発想は、きわめて贅沢なことだと羨ましく思いました。

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