ポーラ美術館

安田幸一(2002)

第16回村野藤吾賞をはじめ、数々の賞を受賞した作品だそうで、美術館のサイトでも建築としての魅力を強調しています。とはいえ私には、少なくとも一度訪れたかぎりでは、それほどすばらしい作品とは思えなかったのでした。

まず、ガラスを多用した軽やかで明るい空間は確かにたいへん気持ちのよいものでしたが、その点に関しては最近建てられた美術館はどこも似たようなもので、むしろ定番そのものという印象を免れず、個性を感じさせるには至りませんでした。

さらに残念であったのは、土地の持つ豊かな起伏を活かしきっていないのではないかと思われた点です。エントランスこそ、地面の傾斜に沿ってゆるやかに降りてゆきますが、そこから先の展示室はほぼ垂直に、地下一階、地下二階と下降するようになっています。つまり、「地表を這う」のではなく「地中にもぐる」構造なわけで、これでは平らな土地に建っているのと結局何ら変わりがありません。せっかくの起伏をもっと有効に活用し、傾斜に合わせて展示室が展開してゆくような構成にできなかったものでしょうか。

最後に、これは私が気付かなかっただけかもしれませんが、周囲に遊歩道などは整備されているのでしょうか。美術館に沿って箱根の森林を散策できるなら、さらに気分がよいことでしょう。

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