六甲の集合住宅

★★★

安藤忠雄(1983)

六甲の集合住宅は三つの期間に分けて、20年近い歳月を経て建設されました。その第T期こそ、安藤の造ったすべての中で、私が最も感動したものです。関西を旅した折、期待に胸を膨らませて彼の作品を見て回ったものの、正直に言ってがっかりすることの方が多いくらいでした。しかしこれは別格です。急坂を苦労して上り下りして、息を切らせてやっとたどりついた甲斐がありました。

六甲の急峻な斜面に張り付くように、この建物は建っています。まさに大地にしがみつくような、生命の力が漲っています。コンクリートという素材が、その力強さを際立たせています。尋常でないエネルギーがひしひしと感じられます。傑作たるもの、こうでなければなりません。

建物内部は、それぞれに個性をもたせた各住戸が、小広場や階段といった路地的な共用空間によって緊密に結び付けられており、しかも、内部空間のそのような多様性は、建築物を土地の傾斜に合わせる必要性からの帰結なのだそうです(『建築に夢をみた』)。土着の集落を思わせるその風貌は、こうした事情に由来するのでしょう。それにしても、第II期、第III期と時代を下るにしたがって、だんだんふつうの近代的マンションになってしまったのは残念です。

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