静岡新聞・静岡放送東京支社

丹下健三(1967)

木のような外観が一見たいへん奇妙ですが、丹下が最もメタボリズムに近づいた頃の作品と言われれば、納得する人が多いでしょう。ちなみに、メタボリズムの代表作、黒川紀章の中銀カプセルタワービルも、ここからほんの数百メートルのところです。

尤も、丹下のこの時期の主要な関心はもう少し規模の大きな都市設計にあり、この作品もその文脈と関連づけながら理解した方がよいかもしれません。すなわち、そこで考えられていたのは、一本の木で終わるようなチマチマしたものではありませんでした。シャフトが何本も間隔をあけて立ち並び、地上をピロティとして開放し、空中でシャフトから伸びたフロア同士を相互に連結してゆくような空間が構想されていたのです(『建築と都市』)。築地計画の模型写真や、山梨文化会館などを見れば、そのイメージをつかむことができるでしょう。

言い換えると、この建物を一本の木とすれば、その幹から伸びる枝は、隣の木の枝や幹と連結され、いわばガジュマルの森のような都市を形成することがもくろまれていたのです。たまたまここでは木が一本しか育たず、森に発展しなかったわけですね。

ともあれ、中銀カプセルタワービルもどうやら近々取り壊されるようですし、すると当分はこの一本の木が、東京におけるメタボリズムの代表的遺産の地位を得ることになるのでしょう。

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