シンタックス

高松伸(1990)

京都の北山通にありました。過去形になってしまったのが哀しいところです。どこにあったかも、もう正確にはわかりません。私が訪れた2002年秋の時点で、すでに空きビルでした。その後2〜3年のあいだに取り壊されたのでしょう。確かに、あまり使い勝手がよさそうではありません。ロボットのような特異な形状の、ただでさえ広くはない中を複雑に階段が入り組んでおり、まさに機械の中に迷い込んだかのようです。しかし、金属的で規則正しい装飾など、ディテールの仕上げの美しさは高松の作品の中でも優れたものでした。消えてしまったのは残念です。

北山通の近辺には、高松の小規模建築が他にもいくつか点在するほか、安藤忠雄による京都府立陶板名画の庭、磯崎新の京都コンサートホールがあり、なかなか洒落た街並みです。京都府立植物園もあれば、京都工芸繊維大学もあります。しかし、それにもかかわらず、商業地域というよりは住宅地の静けさを感じます。表参道や代官山のようなにぎわいはありません。人の住むところであって、人の集まるところではないのです。そのあたりに、このエキセントリックな商業建築が生き残れなかった理由がありそうです。

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