東京カテドラル聖マリア大聖堂

★★★

丹下健三(1964)

丹下の作品は、「とにかく外観が凄い」のが多いと思いますが、ここは例外かもしれません。ステンレス・スチール張りの外装は、てかてかと軽やかで、失礼ながら少々安っぽい感じです。ここではむしろ、ただちに中に入ってください。内部は撮影禁止につき、残念ながら写真はお見せできません。コンクリートの壁が、平面ではなく、独特の幾何学的な曲面を描きながら上へ昇ってゆきます。この壁がすばらしいのです。丹下らしい、重量感のある聳え立つような空間です。槇文彦の東京キリストの教会に見られるような、明るさや居心地のよさは全くありません。自著によると、カトリックの精神をいかにして建築のうちに表現すればよいか、全くわからず大いに悩んだそうです(『建築と都市』)。この重々しさも、思索の末の結論でしょうか。

この教会では、ときどきコンサートが開かれます。私もバッハやヘンデルの宗教曲を楽しみました。サントリーホールのような現代のコンサートホールは、残響時間が約2秒です。ここでは、それよりもはるかに長い、教会特有の響きが味わえます。少々余談になりますが、私は、バロックのオルガン曲や宗教曲はこの響きで聴くのが本当だと思うのです。作曲家も、教会の音響効果を前提として、作品を書いたはずです。それをコンサートホールで聴くと、ひとつの音が次の音と重なる前に消えて流れてしまい、なんとも味気ないものです。ましてや、近年流行っている古楽器による演奏など、演奏場所を考慮に入れずに楽器だけ復古して、何の意味があるんでしょうか。だから、この教会で音楽を聴く体験は、その荘厳な雰囲気も相俟って、たいへん特別なものなのです。

最後にお願いです。コンサートの宣伝をもっとちゃんとやってください。終わってから気付いて、残念な思いをしたことが何度かありますので。

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