東京国際フォーラム

★★★

ラファエル・ヴィニオリ(1996)

磯崎新は、この東京国際フォーラムを「東京五大粗大ゴミ」のひとつに数えたそうです。いったいどこがいけなかったのでしょうか。

建築として見るかぎり、私はこれはたいへんユニークですばらしい作品だと思います。とりわけ夜、この鯨の肋骨のような物体が輝きながら浮揚するさまは、間違いなく一見に値します。この「骨格」が構造上、果たしてどれほど必要な役割を担っているのか、私には知る由もありませんが、このような巨大構造物が光を放ちつつ宙に浮かぶ情景は、他所では決して目にし得ぬものです。そして、その光の下を縦横無尽に駆けめぐるべく配置された通路もまた、遊びごころに満ちたものと言えるでしょう。

ここに問題があるとすれば、それはむしろ、用途とロケーションのミスマッチではないでしょうか。東京駅と有楽町のあいだに、会議場を主な用途とするこういう施設を置き、「イッパンの方にはカンケイありません」という雰囲気を白々と漂わせてしまったのは、どう考えてももったいないことでした。実際、銀座や東京駅、丸の内を日々行き交う何十万の人々にとって、ここはちっとも憩いの場となっていません。彼ら、彼女たちにしてみれば、この空間はただの「長すぎる廊下」にすぎず、その遊びごころが意識にのぼることもないのです。

尤も、もう少し正確に言うと、ここを憩いの場とする人もわずかながら、います。夕暮れどきに7階まで登っみれば、実に楽しいのです。雑多な群衆が押し寄せてくることがないのは勿怪の幸いで、密やかな喜びを満喫できます。願わくば、この巨鯨の胎内空間がいつまでも東京都心の秘境でありつづけますように。

東京国際フォーラム東京国際フォーラム東京国際フォーラム

<写真はクリックすると拡大します>


ARCHITECTURE HOME