植田正治写真美術館

高松伸(1995)

四本のコンクリートの壁が屹立する正面外観は、無愛想を通り越して恐怖心すら感じさせます。こんなところに強制収容所があるのか、と思いかねない殺風景さです。この建築家特有の、ゴテゴテしたSF的装飾はありません。また、最近の彼の作品にありがちな、ガラスを多用した端正さとも無縁です。砂利が敷き詰められ、コンクリートの壁に囲まれた中庭に立つと、警備兵に監視されて強制労働をさせられている気分になります。脱出は、至難の業でしょう。

「死」を感じさせるこの四本の壁が、植田正治の代表作「少女四態」をモチーフにしているとは、本気か、はたまた悪い冗談か、どちらとも言いうるでしょう。というのも、植田氏の写真は、砂丘の中に妙な具合に作為的に配置された諸人物が、静的で時間の止まったような感覚を生じさせるものであり、そこにはたしかに、この美術館の全体から受ける印象と重なる部分もあるのです。「死」はすなわち「止」であって、ここは実際、あちらに大山、こちらにコンクリートの壁、館内にお客はほとんどおらず、時の流れぬ静止空間にほかなりません。

「『永遠の一瞬』。そんな建築を創りたいと思った。建築というより、時間をデザインしたいと思い詰めた。」(『夢のまにまに夢を見る』)

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