「循環器系」ユニット講義録11,12

月日(曜日) 時限 担 当 講義内容 SBOs番号
5月10日(金)
有 田
循環生理3 静脈還流、肺循環特性 8、9
3
有 田
循環生理4 循環調節
7、10

SBOs

【生理】<変更あり>
 <変更> 血液循環と血圧について説明できる.
  8)   静脈系の特徴と、静脈環流に影響する因子を説明できる.
 <変更> 全身臓器への血流配分を説明できる.

<変更> 血液循環と血圧について説明できる.
 心臓からの拍出は断続的であるが、動脈の血流は連続的となる。
血液が動脈→細動脈→毛細血管→細静脈→静脈の順に流れる課程で、血管系の断面積、血流速度、血管内圧は図のような変動を示す。
 大動脈から次第に中小の動脈に枝分かれしていく課程で、血管の総断面積、流速、血圧はそれほど大きく変動しない。急激な変化が出現するのは、細動脈のレベルである。血管抵抗が極端に大きくなり、血管内圧も著明に減少する。毛細血管のレベルになると、血管の総断面積が最大に広がり、血流速度も最小になる。これは、組織での物質交換に最適な条件といえる。細静脈から静脈を介して心房に、血液が戻ってくる課程で、血管内圧は下がり続けるが、血流速度は回復する。

 末梢組織まで血液を送る駆動圧、すなわち、血圧の発生には、心筋の力以外に、弾性血管と抵抗血管の機能が重要な役割を演ずる。
 弾性血管:大動脈や動脈は壁内には弾性線維が豊富に存在し、この動脈の弾性が、断続的な心拍出を連続的な血流に変える。大きな動脈は弾性血管と呼ばれる。
 抵抗血管:細動脈は平滑筋が豊富で、神経性あるいは液性因子により血管平滑筋の収縮が調節される。普段から血管平滑筋は持続的な緊張があり、血流抵抗を形成する。細動脈は抵抗血管と呼ばれる。

 心臓からの血液は断続的に拍出されるが、血管内の血流は連続的である。また、心室内圧は拡張期にほぼゼロになるが、動脈圧は拡張期でも約80mmHg(120/80mmHg)と高値を維持する。そのメカニズムは、弾性血管と抵抗血管を組み込んだWindkesselモデルによって説明される。
 Windkessel モデル:ピストンは心室に相当し、一定のリズムで往復運動をしているものとする。筒の先端は細くなって、抵抗血管の特性を表している。空気槽は血管の弾性を表す。貯水槽は心房あるいは静脈である。ピストンから水が押し出されると、水の一部は先端から噴出するが、抵抗血管のために、残りは空気槽の方に貯まり、空気を圧縮する。拍出が終って、ピストンが左に動いている間にも、空気槽の圧縮された空気の力(すなわち、血管の弾性)で、筒の先端からの水の噴出は続く。その結果、ポンプからの断続的な拍出は、筒先からの連続的な噴流となる。血圧は拡張期でも80mmHgと高い。

図1

図2

図3

 8) 静脈系の特徴と、静脈環流に影響する因子を説明できる.

 静脈は伸展性(コンプライアンス)が高いので、循環血液量の70-80%をおさめており、容量血管と呼ばれる。抵抗血管(細動脈)や毛細血管を通過した後の静脈においては、血管内圧(静脈圧)はゼロに近い。このように低い静脈圧は、重力による静水圧の影響を強く受けることになる。特に、立位の状態では、心臓より下方に位置する静脈に、血液が貯留することになる。

静脈環流量に影響する因子
 静脈環流の主要な駆動力は心臓のポンプ作用によって与えられる駆動圧(静脈圧)であることは間違いないが、その駆動圧は非常に小さい。
そのため、静脈圧は、体位変換による重力の影響を受けることになる。臥位から立位に体位を変換すると、重力の影響で、下肢側に血液が貯留し、右心房への静脈環流量が減少する。
 下肢の筋肉を収縮させると、筋肉の間を流れる静脈が圧迫されて、下肢に貯まった静脈血が心臓側に汲み上げられる(静脈には逆流を防ぐ弁があり、心臓側にしか血液は移動しない)。これを筋ポンプという。
呼吸運動も静脈環流量に影響する。吸気時には胸腔内は陰圧となり、肺が拡張されるだけではなく、肺静脈も拡張されて、血液が肺側に貯留し、左心房への静脈環流量が減少する。呼気時には逆に静脈環流量が増加する。

<変更> 全身臓器への血流配分を説明できる.

 安静時における心拍出量の血流配分は、脳が15%であり、肝臓と腎臓がそれぞれ20-25%と高く、骨格筋が15-20%と低い。臓器への血流配分を調節するのは、各臓器の細動脈における血管平滑筋の収縮である。これらは、自律神経、ホルモン、代謝産物、CO2、O2などによって調節される。