「運動器(筋・骨格)系」ユニット講義録13,14

月日(曜日) 時限 担 当 講義内容 SBOs番号
5月20日(月)
2
運動生理1 速筋と運筋の機能的役割 36
3
運動生理2 巧みな運動
37、38

SBOs

36) 運動単位の種類と速筋・遅筋の機能的役割を説明できる.
37) 収縮の力学を筋の構造と関連させて述べることができる.
38) 筋紡錘、ゴルジ腱器官の構造と機能的役割を説明できる.

36) 運動単位の種類と速筋・遅筋の機能的役割を説明できる.

骨格筋の運動とエネルギー代謝

運動単位

 骨格筋は運動系の最終共通経路である運動ニューロンによって支配される。1個の運動ニューロンが支配する筋肉のグループを運動単位と呼び、機能単位を構成する。運動単位によって筋肉はS型、FR型、FF型に分類される。   

神経支配比

 単一運動ニューロンの支配する筋線維数を神経支配比といい、その比は細かい運動に関係する筋では小さく、粗大な運動に関与する筋では大きい。

サイズの原理

 運動ニューロンプール内ではそのニューロンの大きさによる興奮性の序列がある。運動ニューロンの活動は小さいニューロンから大きなニューロンの参加が起こり、逆の順で活動を停止する。これをサイズの原理という。

収縮エネルギーの反応

 筋収縮の直接的なエネルギー源はATPであり、クレアチンリン酸からローマン反応、嫌気性解糖系やミトコンドリア内での酸化的リン酸化によって産生される。

酸素負債

 運動すると筋肉中に乳酸が蓄積するが、これを代謝するために運動終了後に一時的に酸素要求量が高くなることを酸素負債oxygen debtという。

筋肉のタイプ

 骨格筋は赤筋と白筋に大別される。赤筋はゆっくりと収縮し疲労が少なく、白筋は収縮は早いが疲労を起こしやすい。生化学的には1型(赤筋タイプ)や2A型や2B型に分けられる。また運動単位によって筋肉はS型、FR型、FF型に分類される。    

図1

表1

37) 収縮の力学を筋の構造と関連させて述べることができる.

筋収縮の概要

筋肉の一般的性質

 骨格筋は腱という強靭な結合組織を介し、1個以上の関節をまたいで骨に付着している。骨格筋は明瞭な横紋構造を有そることから横紋筋と呼ばれる。また運動ニューロンの支配を受け、随意筋である。

筋原線維

 筋原線維は太いフィラメントと細いフィラメントからなる。細いフィラメントはアクチン分子の二重らせん構造であり、これにトロポミオシンやトロポニンが付着している。太いフィラメントはミオシン分子の鎖で形成され、ここから球状の突起がらせん状に突起する。

滑走説

 Ca++とATPの存在下にトロポニンによる抑制作用が解除され、ミオシンフィラメントとアクチンミオシンフィラメントとの間に連結橋が形成される。これによって滑走力が生じ、2つのフィラメントが互いに滑り込む。 。

筋収縮の様式

 1回の刺激によって発生した一回の収縮を単収縮という。刺激頻度が増していくと収縮は加重を起こし、単収縮よりも大きな収縮張力が発生する。連続刺激して起こる加重が強縮と呼ばれる。

等尺性収縮と等張性収縮

 筋肉にある程度負荷をかけながら短縮を起こさせることを等張性収縮という。筋肉をある一定の長さに保ちながら収縮させ、張力を発生させることを等尺性収縮という。

長さ−張力曲線

 骨格筋の収縮張力は生体にあるときの長さ(生体長)で最大となり、筋が伸ばされても短縮させられても減少する。また静止筋を伸展すると静止張力が発生する。   

筋の二要素モデル

 骨格筋の収縮に関係するものとして、直接収縮に関わる収縮要素と、バネとしての性質をもつ弾性要素がある。   

図2

図3

骨格筋における興奮−収縮連関

興奮の伝播

 筋線維の活動電位が筋肉細胞の内部に伝えられ筋の収縮を引き起こす。これを興奮−収縮連関excitation-contraction(EC) couplingという。

横行小管

 興奮は細胞膜から横行小管(T-tubles;T管)を通って細胞内部に伝えられる。このT管は内部で筋小胞体の終末槽と呼ばれる膨大部に接し、三連構造(トライアッド)を形成する。

カルシウム調節機構

 筋小胞体はCa++の貯蔵部であり、横行小管から興奮が伝えられるとCa++は放出され、弛緩時に筋小胞体へ能動輸送(Ca++ポンプ)によって取り込まれる。   

図4

図5

38) 筋紡錘、ゴルジ腱器官の構造と機能的役割を説明できる.

筋収縮力の調節

 筋収縮力は運動単位の活動頻度とその参加数に比例する。目的の収縮力は筋紡錘とゴルジ腱器官の両者によって精巧に調節される。筋紡錘は筋線維の長さ変化を感知し、腱器官は張力の変化を感知して、最適な筋収縮力を得ることができる。

図6

図7

参考書:『TEXT生理学(第3版)』、堀 清記(編)、南山堂
    『標準生理学(第5版)』、本郷利憲他(編)、医学書院