「呼吸器系」ユニット講義録10

月日(曜日) 時限 担 当 講義内容 SBOs番号
4月24日(水)
2
有 田
呼吸生理3 呼吸関連の各種受容器
6、7

SBOs

【生理】
6) 呼吸調節のメカニズムを、肺・気道の各種受容器および化学受容器からの情報処理の面から説明できる.
7) 肺と気道の生体防御機構を説明できる.

6) 呼吸調節のメカニズムを、肺・気道の各種受容器および化学受容器からの情報処理の面から説明できる.

酸素の受容器(末梢化学受容器)

 O2センサーとして、内頚動脈と外頚動脈の分岐部に頚動脈小体があり、舌咽神経(洞神経側枝)を介して呼吸中枢のある延髄の孤束核に求心性情報を送る。補助的なO2センサーとして、大動脈小体があり、迷走神経を介して孤束核に入力する。

炭酸ガスの受容器(中枢化学受容野)

 末梢化学受容器もCO2センサーとしてある程度機能するが、主要なCO2センサーは延髄の腹側にある。この部位は椎骨ー脳底動脈によって環流される領域である。末梢化学受容器のように明確な境界をもつ構造ではなく、延髄腹外側野に散在性にCO2感受性細胞が分布する。したがって、受容器とは呼ばず、中枢化学受容野(中枢性化学感受領域)と表現される。この部位の細胞外液[H+]を増加しても、換気量が増えるので、CO2とH+の双方に感受性をもつ。

酸素受容器としての頸動脈小体

中枢性化学受容野と呼吸化学調節

7) 肺と気道の生体防御機構を説明できる.

咳受容器・刺激受容器(Irritant Receptor)

 咳(刺激)受容器は喉頭、肺門の気管分岐部、肺葉気管支の分岐部などに分布し、気道上皮細胞付近に自由神経終末として存在する。機械的な触刺激や吸入される化学的刺激など種々の刺激に反応して、典型的には咳反射が誘発される。求心性線維は有髄であり、刺激があると、即座に気道に混入した異物を排出、除去する反射に適している。

肺迷走神経C線維

 末梢気道からの求心性神経は7-8割が無髄C線維である。C線維はさまざまの侵害性因子により興奮する。細菌やウイルスが気道に感染巣を形成する、吸入抗原が気道に炎症を形成する、有害なガスが粘膜を損傷する、などの場合である。
神経因性炎症

 侵害性刺激が気道の奥でいつまでも続く状況では、C線維は単に求心性情報を中枢に伝達するだけでなく、軸索反射を介して神経終末から逆行性に化学物質を放出させて、局所に神経因性炎症を誘発させる。また、腺分泌の亢進(痰)や気道平滑筋の収縮なども発生させる。したがって、C線維は究極的には外来性刺激物質を時間をかけて除去する機能をもつ。

肺伸展受容器

 肺伸展受容器は気管後壁の膜様部や気管支の平滑筋層内に見られ、Hering-Breuer反射(肺伸展による吸気抑制ー呼気促進反応)を中継する。肺がある閾値を越えて伸展されると、それ以上に拡張しないように、吸気性ニューロン活動を抑える一種の防御反射である。この反射機構が普段の呼吸制御でも働いて、吸気時間の調節に関与する可能性がある(Inspirayory-Off-Switch 機構)。

気道のC線維と軸索反射

咳反射

肺伸展受容器によるInspiratory-Off-Switch機構

参考書:『TEXT生理学(第3版)』、堀清記編、南山堂

    『標準生理学(第5版)』、本郷利憲等編、医学書院

ビデオ:基礎医学シリーズ『目で見る解剖と生理』Vol.8 呼吸、有田秀穂監修、医学映像教育センター

    (図書館にて閲覧可能)