「呼吸器系」ユニット講義録11

月日(曜日) 時限 担 当 講義内容 SBOs番号
4月24日(水)
3
有 田
呼吸生理4 呼吸筋と呼吸中枢
1、2、5

SBOs

【生理】

1) 呼吸筋の神経支配を説明できる.
2) 呼吸運動のメカニズムを説明できる.
5) 呼吸中枢の構成および神経性入出力関係を説明できる.

※ 呼吸中枢・神経支配については「神経系−2:中枢神経系」ユニット、9月11日開講の『呼吸・循環調節』(担当 有田)において詳しい説明を行う。

1) 呼吸筋の神経支配を説明できる.

横隔膜

 健常人の安静時換気運動は主に横隔膜の収縮・弛緩によって営まれる。その収縮により横隔膜ドームが下降し、肺をふくらませ、吸気を発生させる。横隔膜の面積は約270cm2であり、安静時には約1.5cmの下降があるので、その容積変化は約400mlとなる。これは一回換気量(500ml)の8割に相当する。横隔膜の周期的収縮は頚髄C3〜C5から出る横隔神経によって支配され、そのリズム性活動は延髄の吸気性ニューロンによって制御される。
肺・胸壁の弾性収縮力 呼気過程では、積極的に呼気筋を収縮させて、肺を圧縮する運動は通常おこらない。吸気時に蓄えられた弾性収縮力が受動的に肺を縮小させる。この弾性収縮力は吸気時に伸展されるあらゆる組織(肺と胸壁)に蓄えられる。

呼気筋

 機能的残気量レベルよりも更に肺を縮小させるには、呼気筋の収縮が不可欠である。最も強力な呼気圧を発生させるのは、腹筋である。腹筋の収縮は腹壁を陥凹させて、腹部内臓を圧迫し、横隔膜ドームを押し上げて、肺を圧縮する。もう一つの呼気筋である内肋間筋の収縮は、胸郭の横経を縮小させて、肺を圧縮する。このようにして、肺と胸郭を最大限に縮小させても、なおかつ肺内には一定量(約1200ml)のガスが残る。これを残気量という。

呼吸筋の分類

2) 呼吸運動のメカニズムを説明できる.

肺・胸壁の弾性収縮力

 呼気過程では、積極的に呼気筋を収縮させて、肺を圧縮する運動は通常おこらない。吸気時に蓄えられた弾性収縮力が受動的に肺を縮小させる。この弾性収縮力は吸気時に伸展されるあらゆる組織(肺と胸壁)に蓄えられる。

肺コンプライアンス

 横軸に肺を伸展させる圧力(ΔP)、縦軸に肺の容量変化(ΔV)をとると、圧−量曲線が得られる。この傾き(ΔV/ΔP)を肺コンプライアンス(C)と呼ぶ。肺コンプライアンスが高いことは、伸展しやすい肺であることを意味する。

機能的残気量

 横隔膜収縮が始まる直前には、呼吸筋は完全にリラックスしている。この時、肺の弾性収縮力(縮小する力)とそれに拮抗する胸壁の弾性収縮力とがバランスする。この肺気量を機能的残気量と呼ぶ。健常人では機能的残気量は約2400ml(全肺気量の約40%)である。

肺・胸壁の弾性

参考書:『TEXT生理学(第3版)』、堀清記編、南山堂

    『標準生理学(第5版)』、本郷利憲等編、医学書院

ビデオ:基礎医学シリーズ『目で見る解剖と生理』Vol.8 呼吸、有田秀穂監修、医学映像教育センター

    (図書館にて閲覧可能)