直流通電法を用いた除細動


 直流通電の意義
 心房や心室の心筋が無秩序に収縮していたり、リエントリー回路を回ったりして、頻拍が起こっている場合、心臓に強い通電を短時間に通電すると、分極している部位も脱分極している部位もすべてが一斉に脱分極を起こし、収縮のリズムの足並みをそろえる。そして洞結節から順次収縮する正常な心筋興奮様式に戻すことができる。
 
 直流通電の適応

1.塞栓症を起こしたり症状の強い心房細動で、薬物で治らないもの、あるいは心拍をコントロールできないもの。慢性心房細動は原則として発症後2年以内のもの。
2.症状の強い心房粗動で薬物やペーシングで治らないもの。あるいは薬物でコントロールできないもの。
3.心室細動は無条件に適応となる。
4.心室頻拍は発作時血行動態が非常に悪ければ無条件に適応となる。しかし発作時でも比較的血行動態が安定していれば、薬物あるいはペーシングで頻拍停止を試みて、不成功であれば直流通電を行う。

 心房粗・細動に対する除細動法
 心房粗・細動は致死的不整脈ではないので、
1秒を争う危険性はない。したがって、まず食道超音波検査で心房内の血栓を確認する。血栓がなくてもWarfarinなどで抗凝固療法を行う。実施4時間前から絶食させる。血管を確保し、静脈麻酔を行う。呼吸停止に対する挿管チューブや人工呼吸器の準備をしておく。
喘息など危険因子のある患者は麻酔科医に麻酔をかけてもらう。
原則として抗不整脈薬を直前に静注する。直流通電はQRS同期で行う。微少塞栓子の確認のため施行前後に経頭蓋超音波を行う。電極の一つは心房に近い右前胸部に、他は左脇下とする。小さい人は50joule、大きい人は100jouleから開始して必要に応じて出力を増加する。通電回数の上限は確立されていないが、一般的には3回までとすべきである。通電後遅れて洞調律になることがあるので少し待つ。除細動後に数秒の心停止が起こることがあり、胸部殴打法で対処する。

一般合併症は血栓症(脳梗塞など)、熱傷、重症不整脈(除脈、頻脈)、低血圧など。
除細動

心室細動または心房細動に対して、強力な通電を行うことによって細動を除去し正常調律に復させることを除細動という。

心室細動 心室が一つの有機体として収縮せず一部分ずつ収縮するものをいう。その場合頻度が毎分170300のものを心室粗動といい、頻度が300600のものを心室細動という。
心房細動 心房全体が正常のまとまった収縮、弛緩を行わず、その各小部分が無秩序に不規則に、頻数に収縮する状態をいう。