気管障害におけるダイナミックCTの有用性


東邦大学医学部付属大森病院中央放射線部

○池田 健   武田 稔之   南波 哲朗


【目的】

 気管・気管支の偏位、狭窄、閉塞の原因には外傷、腫瘍性病変、心血管系の異常などがあげられるが、これらの影響による気管壁の連続的な動きの描出は従来の検査法では困難である。そこで我々は、呼吸時の気管をダイナミックCTで撮像することで気管の各呼吸相での情報を胸部外に提供できるか検討したので報告する。

【使用装置】
X線CT装置   Toshiba Xvigor


【方法】

@対象とする気管の位置確認のため気管CTを撮像する。
AダイナミックCTは対象とする気管レベルで吸気と呼気でデータを収集する。
B収集した画像から気道面積を測定し、呼吸よる面積変化をグラフ化する。

C連続した画像はシネモードで表示を行う。

【データ収集条件】

管電圧  120kV              管電流   200mA
スキャン時間      1sec      スライス幅   5mm


【検査症例】

@弛緩性の気管壁 : 2名気管憩室 : 1名気管欠損(術後) : 1名

A気管狭窄
腫瘍  : 4名損傷 : 3名気管切開後 : 2名(うち1名はステント留置)交通事故 : 1名(ステント留置)


気管憩室



収縮時
拡張時


気管壁弛緩症例の気道面積


肺癌


気管壁狭窄症例の気道面積


ステント挿入症例


収縮時
拡張時


【結果】

@気管壁弛緩症例では気道面積は最も壁の弛緩した部分 が拡張することにより変化することが確認できた。
A気管狭窄症例では狭窄の度合い、狭窄部の変化を呼吸相ごとに描出できた。
B金属ステント挿入症例ではステントと隣接臓器との位置関係も掌握できた。

以上から、シネモードで表示することで容易に気管壁の動きを想像でき、ステントの隣接臓器に及ぼす影響の観察にも有効であった。


【考察】
 従来の気管検査では気管の形態の情報を画像表示し ていたが、今回ダイナミックCTを撮像し気管の呼吸による動態変化を比較的容易に表示できたことで治療計画に付加的なデータを提供することができると考えられる。またシネモードで表示することで気管壁の僅かな変化にも有効な検査法であると考えられる。