非放射性キセノン吸入法によるびまん性肝疾患の血流計測



東邦大学医学部付属大森病院  中央放射線部
町田啓一  中野秀治


目的

 現状で肝硬変などのびまん性肝疾患におけるXCT検査の役割は肝細胞癌の早期発見であろうと思われる。しかし現在、CTで検索可能なのは十分に結節として確認でき、しかも肝動脈血流支配優位な古典的肝細胞癌であり、より早期の高分化肝癌を検出することは困難である。しかし、肝硬変症例に、より高率に肝細胞癌が発生するという事実から肝内の環境に何らかの異常状態が発生していると考えられる。

そこで肝内の血流状態が肝硬変症例でどのように変化しているかを検索する
方法として非放射性キセノン吸入法によるDynamic CT を行った。この方法は血流を肝動脈、門脈に分けて計測が可能であることから肝内の血流状態をより仔細に検索することが可能である。

ここでは肝硬変の病態の程度により血流がどう変化するかを計測することで本方法が有効であるかを検討した。



症例  肝硬変重傷度の指標としてChild分類を用いた。


Child 分類
疾患名 例数 平均年齢
肝硬変例
Child C 62.6
Child B 59.6
肝炎例 47.8

今回検討した症例は肝硬変例Child B 5例  
Child C
 5
例 肝炎例 5例の計15例。
平均年齢56.6、男女比は6:9であった。
内訳を左表に示す。



使用機種
方法

当施設で通常行われているXe吸入による局所脳循環血流量の方法に準じた。
30%濃度のキセノン4分間吸入、5分間洗い出しデータ収集条件は120kV,200mA1秒スキャン。吸入開始直前を含めて毎分1スキャンの計10スキャンでデータを収集した




正常ボランティア 肝動脈 Map 肝炎例
肝動脈血流量21.9ml/100g/1min 肝動脈血流量36.5ml/100g/1min
門脈 Map
門脈血流量58.1ml/100g/1min 門脈血流量46.7ml/100g/1min
肝炎症例では正常例に比べて動脈成分が多くなり、門脈成分が少なくなっている。


臨床例
肝硬変 child B
C型肝硬変
腹水(+)
T-BIL0.4
 Alb 3.0