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研究内容

生物の形や大きさは、利用する餌や生息環境へ適応することで多様化する傾向がみられます。自然選択がそのような多様化の原動力になる一方、遺伝・発生基盤がその進化過程に大きく影響を与えます。昆虫や陸産貝類を主材料に、野外調査や分子生物実験、理論的手法を用いて、生物の形態や体色が多様化するメカニズムを研究しています。

マイマイカブリの巨頭型と狹頭型

カタツムリを主食とするオサムシでは「巨頭型」と「狭頭型」を両極とする形態変異が世界的にみられます。巨頭型とはオサムシの頭部と胸部が横に肥大した形態型で、狭頭型とは、それらが縦に伸張した形態型のオサムシです(右図)。興味深いことに、この形態変異はカタツムリを主食とするオサムシでのみ観察され、ミミズや昆虫を主食とする祖先的なオサムシでは報告例がありません。なぜカタツムリを主食とするオサムシでのみ、このような形態変異が生じているのでしょうか。代表的貝食性オサムシであるマイマイカブリに焦点をあて、フィールド調査や行動実験から貝食性オサムシが多様化するメカニズムを研究しています。

Konuma and Chiba 2007 Am Nat 170:90-100.
Konuma et al. 2011 Evolution 65:408-418.
Konuma et al. 2013 Ecology 94: 2638-2644.

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適応放散の遺伝・発生基盤

自然選択や遺伝的浮動が集団内における対立遺伝子頻度の時間的変化をもたらす一方で、進化の方向性や速度、進化可能性は表現型形質の遺伝・発生基盤に大きく依存します。どのような遺伝・発生基盤が適応放散のような適応分化パターンを引き起こすのでしょうか。量的遺伝解析や幾何学的形態解析に基づき、適応分化を促す遺伝・発生基盤解明に取り組んでいます。

Konuma et al. 2013 Heredity 110:86-93.
Konuma et al. 2014 Mol Eco 23:5843-5854.

ゲノム・トランスクリプトーム研究

DNAシーケンサーのスループットが飛躍的に向上した現在、ゲノムやトランスクリプトームに焦点をあてた生態学研究が活発に行われるようになってきました。そのような背景のもと、次世代シーケンサーを用いたエコゲノミクス研究を行い、適応分化過程に関する分子レベルでの解明を進めています。

繁殖干渉がもたらす生態的形質置換

生態学者は、資源競争が近縁種間の形質を分化させる主要因であると主張してきましたが、繁殖干渉こそが近縁種間の生態分化を引き起こす重要な要因になり得ることを理論的に証明することができました。本仮説のさらなる検証を理論と実証、両方面から進めています。

Konuma and Chiba 2007 J Theor Biol 247:354-364.


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