プログラム細胞死はSTATaの制御を受けるか?
生物の進化における大きな謎の1つとして、どのように多細胞生物が出現したかというものがあります。今では、生物はいろいろなやり方で幾つもの異なる生物群において多細胞化したのではないかという考えが広く受け入れられていますが、依然として詳細は不明です。当研究室では、最も原始的な多細胞生物である細胞性粘菌を用いて研究を行っています。単細胞として生活していたものが集合して多細胞体を形成し、最終的な分化の形態である子実体を形成する過程で、柄細胞は液胞化して細胞死(プログラム細胞死の原型と思われる)をおこします。ただし、この反応にはカスパーゼは関与しないため、いわゆるアポトーシスではないことが分かっています。当研究室では、少なくとも多細胞体を呈する限り、転写因子STATaがこの過程に必須であることを突き止めました(Kawata et al, 1997, Cell;
Mohanty et al,
1999, Development)。STATシグナルは酵母などの単細胞真核生物には見られず,多細胞生物に特異的であることから、STAT関連シグナルを探索すれば多細胞化に関する何らかのヒントが得られるのではないかと当初は考えました。しかしながら、解析していくとそう簡単ではないことが分かって来ました。
ここでは、具体的にプログラム細胞死(PCD)に関連する分子と思われるものを細胞性粘菌ゲノムのデータベースを使って広い集めそれらの転写がSTATaによって制御される可能性があるかを第1歩として始めました。その結果、幾つかの遺伝子STATaの制御下にあることが示唆され,そのうちの幾つかについて卒研生によって解析が進められました。それらの機能についても調べています。