梅田スカイビル

★★

原広司(1993)

二本の高層ビルが向き合って建ち、最上部で結合されてそこに「空中庭園」が乗っています。この意図を、原はつぎのように説明しています(Hiroshi Hara: The 'Floating World' of his Architecture)。「高層ビルからなる中心街は、現状において、真に三次元的なものとなっていない。なぜならば、都市計画の観点から見ると、各々の高層ビルが行き止まりを形成しているからである。梅田スカイビルの意図は、広場や空中エスカレーターといった装置を発展させ、組み込むことにより、真に三次元的な都市の実現を可能とすることであった。」つまり、ビルからビルへ、地上に降りることなく渡り歩けるようになって初めて、人の流れが真の三次元性を獲得するというわけです。彼の提案する、一辺500メートルの立方体都市といったモデルも、同様のコンセプトに基づいているのでしょう。

上述の原の都市論は、たしかになかなかご説ごもっともと感心するのですが、しかしこの作品をよく見ると、実はわれわれにはすでにおなじみのものであることがわかります。何のことはない、彼のこれまでの作品では横に寝ていたものが、ここでは縦に立っただけのことなのです。彼の創ったものを見るたびに、私はどこか途方もない子供っぽさを感じずにいられません。子供が気の趣くままに描く宇宙船や未来都市の絵が、そのまま建築物になったかのようです。雲のようなオブジェや、露出した階段など、「こういうものがあったらかっこいい、楽しい」という空想が、つぎつぎと現実の物体になってゆくのです。とはいえもちろん、それをこれだけの巨大スケールで実現してしまうのは、やはり度外れた才能の賜であるに相違ないでしょう。

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