甲種危険物取扱者を受験したよ

2001年5月10日加筆修正 2001年度入学生からカリキュラムが変更しましたので,一部修正しました.


 景気が徐々に上向きと言われていますが化学系の就職はまだまだ厳しいものがあります.就職活動を少しでも有利に進めるためにはどうしたらよいでしょうか?

 その方策の一つとして「資格の取得」があります.

 今はやりの情報関連の資格を取得するのも結構ですが,せっかく化学科にいるのですから学科の特色を生かした資格を取得することを考えてはどうでしょう.

 化学科の得意分野を生かすことができる資格といえば何と言っても危険物取扱者でしょう.

 そこで,学生諸君に偉そうなことを言う前に,まずは自分で甲種危険物取扱者を受験しようと考えました.

 以下は私の危険物取扱者受験体験記です.フトした思い付きから始まる約一ヶ月間の私の苦悩と葛藤の日々(?)の記録です.皆さんのご参考になれば幸いです.

青字のところは直接リンクできるようにしてあります.


平成12年10月5日(木)
 今日も一日元気に仕事をしたからさあ帰ろうと思いながら
化学系の学生向けのホームページを見ていたらふと,「資格」と「危険物取扱者」 に目が行った.

 それらのリンク先に危険物取扱者試験を行っている消防試験研究センターのホームページがあり,千葉県での試験に関する情報も見つけた.

 ためしに受験してみようかなあと思い始めた私は消防試験研究センター千葉県支部のホームページを見てちょっとショック.今日10月5日(木)は千葉県で行われる今年度最後の試験の申し込み締め切り日だった!

 そこで先ほどの消防試験研究センターのホームページをもう一度眺めていると,なんと危険物取扱者は自分が住んでいる以外の県や都でも受験できることを発見した.東京都で合格となると,あの石原都知事から免状が交付される.これはちょっとうれしい.

 後で気がついたのだが,免状には知事の名前は記載されないようだ・・・・

 さらに都合の良い事に東京都の甲種危険物取扱者の申し込み締切日は10月13日(水).まだ一週間ある.

 翌日近くの消防署に行って願書を貰ってきた.実家に電話して大学院の学位記をファックスで送ってもらい,あとは写真だけ揃えれば良いというところまで来た.

 願書そのものは全国共通.しかし要項は各都道府県で出しているので,貰ってきた書類には千葉県での受験のことは書かれてあったが東京都での受験のことは一切書かれていなかった.

 インターネットの便利さをここでも実感.

 危険物取扱者には甲,乙,丙種の三種類あり,甲種を受験する場合だけ受験資格を必要とする.

 乙種には1類から6類まであり,ガソリン,灯油などは乙種−4類である.いわゆる乙4(オツヨン)が最も受験者が多い.

 甲種の受験資格は化学系の学科を卒業していればOK.もちろん化学系の大学院もOK.

 うれしいことに,化学系の学科の大学生で化学系の科目を「15単位以上修得」していれば受験が可能である(単位修得証明書を提出する).

 ちなみに東邦大学理学部化学科では2000年度入学生までは1年次に化学と名の付く授業(演習,実験を含む)を21単位取得することができる.したがって1年次科目の単位を15単位以上取得すると2年生で甲種受験資格が得られる.

 また,2001年度以降の入学生は2年前期までで15単位取得することができるので,2年の後期になれば甲種受験資格が得られる.

 化学系の演習,実験もOKであるということは,消防試験研究センター千葉県支部に電話して確認済み.


平成12年10月8日(日)
 家の近くの本屋を回って甲種危険物受験用の参考書を探し回るがなかなか見つからない.あるのは乙4ばかり.どうにか1冊(1000円)見つけたのでそれを買って勉強開始.

 物理と化学危険物の性質並びに火災予防及び消火の方法危険物に関する法令の3科目すべて60%以上正解で合格だそうな.1科目でも60%に達しなければ不合格.

 いざやってみると物理と化学はそこそこできるが,危険物の性質を覚え,さらに法令を覚えるのは大変なことだ.始めたばかりだというのに少し弱気になる.


平成12年10月9日(月)
 体育の日で休みであるが測定で大学に来たので大学の周りの本屋を探した.日大の前の書店で模擬問題集(600円)を見つけたので購入.

 さらにインターネットで危険物の受験参考書を探していると,ある出版社の参考書はインターネットで購入できることを見つけたので早速申し込んだ(1400円+送料).


平成12年10月10日(火)
 願書に写真と郵便振替払込受付証明書(甲種の受験料は5000円もする)を貼り付けて郵送.

 写真はパスポートの更新に使った残りを規定の大きさに切って使った.ほとんど全面,顔だけの写真になってしまった・・・・この写真は結局,あとで再提出となってしまう.


平成12年10月13日(金)
 インターネットで頼んだ問題集到着.これは今まで購入したものの中で問題の数,解説ともに充実していて良さそうだ.すこしだけやる気がでる.

 Yahooの掲示板で東京防災指導会から問題集が発行されているという情報を入手.

 そこで確かに問題集と参考書が売られていることを確認.さらに危険物受験者のための講習会を行っているらしい.

 甲種受験用の講習会はまるまる三日間.費用は2万円以上もする.時間とお金がない私は即ヤメタ.東京防災指導会に電話して例題集(1200円+送料)だけを送ってもらうことにした.


平成12年10月17日(火)
 東京防災指導会から例題集到着.甲,乙4,丙種の例題がのっている問題集であった.平成12年度版と書いてあったので最近の出題傾向に最も近いのでは!との予感.

 エッ?今までやってきた問題集とは傾向がずいぶん違う.燃焼試験に関する問題なんか一つも出ていないではないか・・・・

 この後の日々は早朝家で30〜40分,夜家に帰ってから1時間半くらい毎日勉強した.覚えても覚えても次から次へと忘れていく.一人で勉強するとどうせすぐ飽きるだろうからと,ウチの奥さんも強引に受験させることにして一緒に勉強した.どうも記憶力はウチの奥さんの方が良いみたいだ・・・・



平成12年11月1日(水)
 受験票が到着.私だけ写真が再提出となっていた.ウチの奥さんもパスポート写真を切って送ったのに変だなあと思う.

 受験当日わかったのだが,実は奥さんも写真が再提出のはずであったが,消防試験研究センターの担当者が受験票の裏に「写真再提出」のハンコを押すのを忘れたそうだ.

 受験用の写真は免状にも必要なので「第一ボタンまで写っているものでなくてはいけない」ということを後で聞いた.写真をケチると二度手間になる.

再提出となった写真

顔が写真の縦の長さの三分の二程度の大きさでないと受け付けてくれない.


平成12年11月6日(月)
 そろそろ危険物の勉強に飽きてきた.法令はなかなか覚えられないし危険物の性質も覚えられない.今までやってきた問題集の中から傾向があってそうな二冊を選び,もう一度やり始めた.

 前回正解したものが間違ったり,記憶していたはずのものがすっかり頭から消えていたりと,かなり自信喪失気味になった.それらをすべて年のせいにし,あと一週間で終わると奮起して勉強を続ける.でもなかなか進まない.

 千葉県での試験(11月26日(日))を受けなくて良かったと,このときつくづく思った.今まで四週間ほど勉強してきて,この後さらに三週間も勉強したくないというのが本音.



平成12年11月11日(土)
 翌日試験なので早々と家に帰って勉強するつもりだったが,測定の関係で家に帰ると9時を過ぎていた.食事をして風呂に入ったら眠くなったので,翌日朝起きてから勉強することにした.


平成12年11月12日(日)
 いつものように5時30分に起き日課となっている朝風呂には入らず50分ほどかけて暗記したものをもう一度まとめた.新宿の先の笹塚というところに9時に集合なので7時5分に家を出た.

 電車の中でウチの奥さんはひたすら勉強していたが,私は電車の中で文字を見ると頭が痛くなるので終始ボ〜ッとしていた.

 8時40分に試験会場に到着.窓際三列並びの左側の席.右隣の席はかなり年配のおじさん.この年になって受験するなんてたいしたものだと感心した.

 8時45分頃から受験に関する説明が始まった.

 9時を過ぎてから遅れて来た不届き者は,なんと試験室の入り口で止められて部屋に入れずにいた.説明が終了してから一人一人チェックされて席についていた.試験に遅れてくると良いことはないですね.

 9時30分ぴったりに試験開始.物理と化学,危険物の性質並びに火災予防及び消火の方法は不安がなかったが,法令で見たことがない問題が5,6題あった.2時間30分の試験時間のうち1時間ほどを法令の問題の中で自信がない数問に費やした.

 試験開始後1時間ほどたってから試験官の人がご丁寧にも換気のため窓を開けてくれたので,寒くてしょうがなくなり終了15分前に退出した.

 発表までの45分ほどを別の試験室で受験した奥さんと試験問題について話していた.法令の問題について話せば話すほど自信がなくなる.それにしてもウチの奥さんは強気だった

 12時45分結果発表.幸運にも夫婦二人して合格.残念ながら,隣の席のおじさんは不合格.どうか次回は頑張ってください.合格率は約41%でした.甲種危険物取扱者の合格率は全国平均では約30%程度.東京都の合格率はなぜか高い.

 手続き(免状交付手数料として郵送料込みで3090円支払った)をして家路についた.

 試験場の外に出たら,訓練用の10階立てくらいの高層マンションで消火訓練をしていた.各階につけられた大きなモニターで火や煙の映像が流されており,最初は本当に燃えているのかとびっくした.しばし立ち止まって訓練の様子を見た.スゴイの一言.

 これから,火事のシーズン.みなさん火事には気をつけましょう.

 帰りしな,頭がボ〜ッとしているせいか二度も逆方向の電車に乗りそうになった.約3週間後に免状が送付されてくる予定.長かった一ヶ月もハッピーエンドとなりました.


 東京の消防試験研究センターで受験すると即日合格発表だが,それ以外の地での受験は合格通知が一ヶ月後,免状がさらに一ヶ月後になる.



 今回の経験でつくづく危険物の資格は大学在学中にとるものだ!と感じました.化学科の学生,院生のみなさん.一度トライしてみてはいかがでしょうか.

 初めにも書きましたが,就職する際に有利になる可能性があり(少なくとも絶対に不利にはならないこのホームページを見た企業に勤めている私の友人から「是非とも学生さんに力説するように」とのメールをもらいました)化学に携わる者として必要な危険物に対する知識も得ることができます.

 就職後,仕事をする上で必要となり”忙しい合間をぬって”危険物の資格を取得しなくてはならない人もでてきます(結構つらいものがあります.経験者は語る・・・).それならば,時間の余裕がある学生の時に受験する方がいろいろな面で有利であると思います.

 受験してみて驚いたのですが,意外と女性の受験者が多く,そのほとんどが学生さんのようでした(近くで会話をしていた女の人たちは,しきりに大学の先生の悪口を言っていた).

 甲種危険物取扱者は千葉県では年に3回,東京都では4回ほど行われるようです.ちなみにお隣の日大生産工学部は千葉県の受験会場となっている.東邦大生にとってはラッキーだと思いませんか.私のように朝の7時に家を出なくてすむ.

 一番受験日が近いのは東京都で平成13年3月26日(月)に甲種危険物取扱者の試験が行われます.東京都の願書を数部もらってきましたのでご入用の方は差し上げます.

 千葉県では毎年6月に2度,11月に一度,甲種の試験が行われるようです.最初から甲種は・・・ と思われる方はためしに乙4を受験するのも方法かと思います(ただし,受験生は高校生が多いようです).でも,一番やっかいな法令は甲種とそれほど変わらないかもしれません.

 詳しい情報をお知りになりたい方は上記のホームページにアクセスするか,私のところまでいらっしゃってください.実際に使用した問題集などもお教えします.

12月2日に免状が届きました.


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