一置換ベンゼンにおける置換基効果を見る

 下の図は静電ポテシャル等値面を重ねた分子モデルです.はじめにベンゼン環上の静電ポテンシャル等値面に注目すると,オルト−パラ配向性活性基を持つ一置換ベンゼン(a)〜(e)とベンゼン(f)ではすべての分子で静電ポテンシャル等値面がベンゼン環上を覆っており,これらのベンゼン環が電子に富んでいることがわかります.これに対しオルト―パラ配向性不活性基を持つ(g)〜(i)やメタ配向性不活性基を持つ(j)〜(p)では,ほとんどのベンゼン環上に静電ポテンシャル等値面があらわれていません.この結果は(g)〜(p)のベンゼン環が(a)〜(f)のベンゼン環よりも電子に乏しいことを示しています.したがって適当な値の負の静電ポテンシャル等値面を表示させることによって,その置換基がベンゼン環の反応性を活性化するのか不活性化するのかを見ることができます.


 次に置換基上の静電ポテンシャル等値面に注目します.非共有電子対が置換基上にある一置換ベンゼンにおいて,オルト−パラ配向性基を持つ一置換ベンゼンとメタ配向性基を持つ一置換ベンゼンでは”非共有電子対が偏っている位置”が明らかに異なっています.たとえば,ベンゼンに直結している原子上の電子が偏っているとオルト−パイ配向性基,原子一つ隔てた原子上に電子が偏っているものはメタ配向性基であるということがわかります.