多くの教科書では一置換ベンゼンの配向性を説明するために図のような共鳴構造式を使っています.静電ポテンシャルを利用することによりこれらの電子の様子を視覚化することができます.

次の図はアニリンと安息香酸のオルト,メタ,およびパラ位にそれぞれニトロニウムイオンが攻撃したカチオン中間体の静電ポテンシャルマップです.

これらの図で青く(濃く)示されているところは電子に乏しいところ(図2でカチオンとなっている場所)を示しています.アニリンのニトロ化ではオルト位(a)とパラ位(c)に攻撃した場合,アミノ基が結合している炭素上の電子密度が低いのがわかります.

この炭素にアミノ基から電子が供与されることベンゼン環が安定化します.メタ位の攻撃(b)ではそのような効果がありません.

したがってミノ基はオルト―パラ配向性であると説明できます.これとは逆に安息香酸のニトロでオルト位(d)とパラ位(f)にニトロニウムイオンが攻撃すると電子吸引性基であるカルボキシル基(カルボニル炭素も電子密度が低いのがわかる)が結合している炭素上の電子密度が低下し,ベンゼン環を不安定化する.メタ位の攻撃(b)ではそのような不安定化がないためカルボキシル基はメタ配向性であると説明できます.