箱根樹木園休息所

★★

村野藤吾(1971)

箱根樹木園は、芦ノ湖の湖尻からザ・プリンスへとつながる遊歩道の途上にあります。入園料を500円取られますが、特に植物園として整備されているわけでもなく、ただの森と変わりありません。ですから、樹木に期待して来た人は損をした気分になるでしょう。そう、ここで観察するべきは、その片隅にある大きなきのこなのです。1971年と記されているところを見ると、どうやら私と同い年のようです。3本の立派なきのこが、ぴたりと寄り添って生えています。地面との異質感がなく、自然に、自分の力で土を持ち上げて生え出てきたように見えます。それもそのはず、これは森の産み出した恵みのひとつなのです。夏になれば、あたりにはさらに鬱蒼と草木が生い茂り、探し出すことすら難しくなりそうです。でも、こうして人知れずにひっそりと歳を重ねてゆくことが、このきのこにはふさわしいのかもしれません。その魅力に感じ入った者だけを、その内へと静かに招き入れてくれるなら、なおすばらしいことと思いますが。

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