「呼吸器系」ユニット講義録9

月日(曜日) 時限 担 当 講義内容 SBOs番号
4月22日(月)
3
有 田
呼吸生理2 肺機能   
3、4、8

SBOs

【生理】
3) 肺気量の分画を肺・胸郭系の圧・容量関係から説明できる.
4) 気道抵抗の概念を説明できる.
8) 肺胞換気と死腔を説明できる.(「呼吸器系」ユニット講義録8を参照)

3) 肺気量の分画を肺・胸郭系の圧・容量関係から説明できる.
4) 気道抵抗の概念を説明できる.

横隔膜

健常人の安静時換気運動は主に横隔膜の収縮・弛緩によって営まれる。その収縮により横隔膜ドームが下降し、肺をふくらませ、吸気を発生させる。横隔膜の面積は約270cm2であり、安静時には約1.5cmの下降があるので、その容積変化は約400mlとなる。これは一回換気量(500ml)の8割に相当する。横隔膜の周期的収縮は頚髄C3〜C5から出る横隔神経によって支配され、そのリズム性活動は延髄の吸気性ニューロンによって制御される。

肺・胸壁の弾性収縮力

呼気過程では、積極的に呼気筋を収縮させて、肺を圧縮する運動は通常おこらない。吸気時に蓄えられた弾性収縮力が受動的に肺を縮小させる。この弾性収縮力は吸気時に伸展されるあらゆる組織(肺と胸壁)に蓄えられる。

肺コンプライアンス

 横軸に肺を伸展させる圧力(ΔP)、縦軸に肺の容量変化(ΔV)をとると、圧ー量曲線が得られる。この傾き(ΔV/ΔP)を肺コンプライアンス(C)と呼ぶ。肺コンプライアンスが高いことは、伸展しやすい肺であることを意味する。

機能的残気量

 横隔膜収縮が始まる直前には、呼吸筋は完全にリラックスしている。この時、肺の弾性収縮力(縮小する力)とそれに拮抗する胸壁の弾性収縮力とがバランスする。この肺気量を機能的残気量と呼ぶ。健常人では機能的残気量は約2400ml(全肺気量の約40%)である。

呼気筋

 機能的残気量レベルよりも更に肺を縮小させるには、呼気筋の収縮が不可欠である。最も強力な呼気圧を発生させるのは、腹筋である。腹筋の収縮は腹壁を陥凹させて、腹部内臓を圧迫し、横隔膜ドームを押し上げて、肺を圧縮する。もう一つの呼気筋である内肋間筋の収縮は、胸郭の横経を縮小させて、肺を圧縮する。このようにして、肺と胸郭を最大限に縮小させても、なおかつ肺内には一定量(約1200ml)のガスが残る。こを残気量という。

肺気量と1秒率

肺・胸壁の弾性

気道抵抗

 最大に深吸気した後に一気に呼出し、1秒間に肺活量の何%が呼出されるか(1秒率)によって、気道抵抗が評価される。気道抵抗の規定因子は気道内径であり、喉頭や気管の内径が重要である。

上気道筋

 気道で一番狭い部分である喉頭の声門は、換気運動と連動してリズミックな開閉運動を行う。声門は吸気時に開大し、呼気時に狭くなるが、この運動は喉頭の声門開大筋と閉鎖筋によって調節される。これらの喉頭筋は、延髄の呼吸中枢に存在する迷走運動神経(反回神経側枝)による投射を受ける。反回神経が障害されると、気道閉塞の危険がある。

8) 肺胞換気と死腔を説明できる.(「呼吸器系」ユニット講義録8を参照)

参考書:『TEXT生理学(第3版)』、堀清記編、南山堂

    『標準生理学(第5版)』、本郷利憲等編、医学書院

ビデオ:基礎医学シリーズ『目で見る解剖と生理』Vol.8 呼吸、有田秀穂監修、医学映像教育センター

    (図書館にて閲覧可能)