3.6:直積群
2つの群から新たに群を構成することができる. $(G_1,\circ_1)$と$(G_2,\circ_2)$を単位元をそれぞれ$e_1$と$e_2$とする群とする. 今,直積$G_1 \times G_2$上の演算$\circ$を以下で定義する. \[ \circ : (G_1 \times G_2) \times (G_1 \times G_2) \to G_1 \times G_2; ((a_1,b_1),(a_2,b_2)) \mapsto (a_1 \circ_1 a_2, b_1 \circ_2 b_2). \]命題 3.26
$(G_1 \times G_2, \circ)$は単位元を$(e_1,e_2)$とする群である.
証明
演習問題とする.
例 3.27
直積群$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$を考える.ただし,演算の記号として$+$を使う.これは以下の乗法表で定義される群である.
今,$(\overline{0},\overline{0})=e, (\overline{1},\overline{0})=a,(\overline{0},\overline{1})=b,(\overline{1},\overline{1})=c$とすると,$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$は例3.15で考えた$(G,\circ_2)$に他ならない.
一方で,同様に乗法表を比べることで$(G,\circ_1)$は$\mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$と同一視することができる.したがって,例3.15で説明していたことは,$\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$と$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$が「本質的には」違う有限群であるということである.しかし,実は$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$と$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$は「本質的には」同じ有限群である.つまり,この2つの群の乗法表は同じ形をしている.より詳しい説明は後の章で行う.
