情報数理C

8.1:シローの定理と有限アーベル群の構造定理

有限群の構造を調べるとき,まずその位数の素因数分解に注目するのが自然である. 実際,位数が素数の群は必ず巡回群となり, 非常に単純な構造をもつことをすでに見た. 一般の有限群に対しても, 位数に現れる素数ごとの構造を調べることで, 群の全体像を理解することができる. その基本となるのがシローの定理である.
まず,シロー部分群の定義を与える.
定義 8.1.1
$G$を有限群,$p$を$|G|$の素因数とし,$|G|=p^r m$ (ただし$\gcd(p,m)=1$)と表す.
  • 位数が$p$の冪である$G$の部分群を$G$の$p$部分群と呼ぶ.

  • 位数が$p^r$の$G$の部分群を$G$のシロー$p$部分群と呼ぶ.

シローの定理は, 有限群の中に存在する $p$ 部分群の構造を詳しく記述するものであり, 有限群論の基本定理の一つである.
定理 8.1.2:シローの定理
$G$を有限群,$p$を$|G|$の素因数とし,$|G|=p^r m$ (ただし$\gcd(p,m)=1$)と表す. このとき,以下が成り立つ.
  • $G$のシロー$p$部分群は少なくとも一つ存在する.

  • $G$の任意の$p$部分群はあるシロー$p$部分群に含まれる.

  • $G$のシロー$p$部分群は全て互いに共役である.

  • $G$のシロー$p$部分群の個数を$n_p$とすると,\[ n_p\mid m,\qquad n_p\equiv_p 1 \]が成り立つ.

シローの定理は一般の有限群に対する結果であるが, 特にアーベル群の場合には, より強い分類結果が得られる. 次に,有限アーベル群の構造を完全に記述する定理を紹介する.
定理 8.1.3:有限アーベル群の構造定理
$G$を有限アーベル群とする.このとき,ある自然数$a_1,\ldots,a_t$と素数$p_1,\ldots,p_t$と同型 \[ G \cong \mathbb{Z}/p_1^{a_1} \mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/p_2^{a_2}\mathbb{Z} \times \cdots \times \mathbb{Z}/p_t^{a_t}\mathbb{Z} \] が存在する(ここで$p_1,\ldots,p_t$には同じものが現れてもよい).また$p_1^{a_1},\ldots,p_t^{a_t}$は順序を除いて一意的に定まる.
このテキストでは有限アーベル群の構造定理の証明は省略し,シローの定理の証明だけにとどめる.またシローの定理の証明は後にまわし,次の節ではその応用を見ていく.