8.3:シローの定理の証明
ここではシローの定理を証明する. まずはシローの定理の1つ目の主張を証明する.定理 8.3.1:シローの定理の(1)
$G$を有限群,$p$を$|G|$の素因数とし,$|G|=p^r m$ (ただし$\gcd(p,m)=1$)と表す.
このとき,$G$のシロー$p$部分群は少なくとも一つ存在する.
証明
位数が$p^r$となる$G$の部分集合全体の集合を$X$とする.このとき,$|X|=\binom{p^rm}{p^r}$である.まず,$|X|$が$p$で割り切れないことを示す.
\begin{align*}
\binom{p^r m}{p^r}&=\dfrac{(p^rm)!}{(p^r)!(p^{r}(m-1))!}\\
&=\dfrac{p^r m (p^r m-1) \cdots (p^r m-i) \cdots (p^rm-p^r+1)}{p^r(p^r-1)\cdots(p^r-i) \cdots 1}
\end{align*}
であり,$i=1,\ldots,p^r-1$に対して,$p^r m-i$と$p^r-i$の素因数分解に現れる$p$の冪は一致する.したがって,約分すると分母分子に$p$は現れない.したがって,$|X|$は$p$で割り切れない.
今,$G$は$X$に
\[
g \bullet A:=gA:=\{ga : a \in A\} \quad (g \in G, A \in X)
\]
により作用する.この作用の軌道分解を考えると
\[
|X|=\sum_{O \in {\rm Orb}(X)} |O|
\]
であり,$|X|$は$p$の倍数ではないので,少なくとも1つの$O \in {\rm Orb}(X)$に対し,$|O|$は$p$の倍数ではない.$O=gA$とする($A \in X$).このとき,$|O|=|G|/|G_A|$である.ここで,$G_A$は$A$の安定化群
\[
G_A=\{g \in G : gA=A\}
\]
である.$|O|$は$p$で割り切れないので,
\[
\frac{p^rm}{|G_A|}
\]
が$p$で割り切れないことになる.
したがって,$|G_A|$に含まれる$p$の冪は
ちょうど$p^r$である.
すなわち$|G_A|$は$p^r$の倍数である.
今,$a \in A$を任意にとる.このとき,$a \in G$なので,$G_A$が$G$の部分群であることから
右剰余類$G_A a$が考えられる.このとき,$|G_A a|=|G_A|$が成り立つ.
また,任意の$g \in G_A$に対して,$ga \in A$となる.したがって$G_A a \subset A$が成り立つ.
すると,
\[
|G_A|=|G_A a| \leq |A|=p^r
\]
となるので,$|G_A|=p^r$が得られる.したがって,$G_A$は$G$のシロー$p$部分群である.
次にシローの定理の(2)と(3)を示す.そのために,次の補題を示す.
補題 8.3.2
$G$を有限群,$p$を$|G|$の素因数とし,$|G|=p^r m$ (ただし$\gcd(p,m)=1$)と表す.また$P$を$G$のシロー$p$部分群とし,$H$を$G$の$p$部分群とする.このとき,ある$x \in G$が存在して$x^{-1} H x \subset P$となる.
証明
$X:=G/P$とおく.このとき,$|X|=|G|/|P|=m$である.今,写像
\[
\bullet :H \times X \to X, (h,xP) \mapsto (hx)P
\]
を考える.このとき$\bullet$はwell-definedな$H$の$X$への作用となる.この作用による$X$の軌道分解を考えると,
\[
|X|=\sum_{O \in {\rm Orb}(X)} |O|
\]
が成り立つ.特に,$|O|$は$|H|$の約数であるが,$|X|=m$は$p$を約数に持たないので,少なくとも1つの$O \in {\rm Orb}(X)$に対し,$|O|=1$である.このとき,$H_{xP}=H$となる$xP \in X$が存在する.つまり,任意の$h \in H$に対し,$h \bullet xP =xP$である.これは任意の$h \in H$に対し,$x^{-1} h x \in P$を意味する.したがって,$x^{-1} H x \subset P$となる.
それではシローの定理の(2)と(3)を示す.
定理 8.3.3:シローの定理の(2)と(3)
$G$を有限群,$p$を$|G|$の素因数とし,$|G|=p^r m$ (ただし$\gcd(p,m)=1$)と表す.
このとき,以下が成り立つ.
$G$の任意の$p$部分群はあるシロー$p$部分群に含まれる.
$G$のシロー$p$部分群は全て互いに共役である.
証明
$P$を$G$のシロー$p$部分群とする.
$H$を$G$の任意の$p$部分群とする.
このとき,補題8.3.2よりある$x \in G$が存在して$x^{-1} H x \subset P$となる.すると,$H \subset x P x^{-1}$が成り立つ.
任意の$g \in G$に対し,$|g^{-1} P g|=|P|$であったので,$g^{-1}P g$も$G$のシロー$p$部分群である.
したがって,(2)が成り立つ.また$H$がシロー$p$部分群であれば,$|H|=p^r=|x P x^{-1}|$なので,$H=x P x^{-1}$となり,$H$と$P$は共役である.これで(3)が示された.
最後にシローの定理の(4)を示す.
定理 8.3.4:シローの定理の(4)
$G$を有限群,$p$を$|G|$の素因子とし,$|G|=p^{r}m$(ただし$\gcd(p,m)=1$)と表す.
$G$のシロー$p$部分群の個数を$n_p$とする.
このとき
\[
n_p\equiv 1 \pmod p,
\qquad
n_p\mid m
\]
が成り立つ.
証明
$G$のシロー$p$部分群全体の集合を$
X$とする.このとき,$|X|=n_p$である.
$G$は$X$に
\[
\bullet : G \times X \to X,
\quad (x,H) \mapsto xHx^{-1}
\]
で作用する.
$P$を$G$のシロー$p$部分群とする.このとき,(3)より,$P$の$G$軌道$G \bullet P$は$X$全体となる.したがって,$|X|=|G\bullet P|=|G|/|G_P|$が成り立つ.ここで,$G_P$は$P$の安定化群$G_P=\{g\in G : g \bullet P=gPg^{-1}=P\}$である.ここで,$x \in P$に対し,$xPx^{-1}=P$が成り立つので,$P \subset G_P$である.すると$|G_P|$は$|P|=p^r$の倍数である.したがって,$|X|$は$m$の倍数となることがわかる.
次に$n_p\equiv_p 1$を示す.$P$は$X$に
\[
\bullet_P :P \times X \to X, \quad (x,H) \mapsto xHx^{-1}
\]
で作用するとみなす(上の作用を$P$に制限したもの).この作用の軌道分解より
\[
|X|
=|X^{P}|+\sum_{O\in {\rm Orb}(X),\ |O|>1}|O|
\]
が成り立つ.
ここで,$X^P$は$P$の固定点全体の集合
\[X^P=\{H \in X : P_H=P\}=\{H \in X : x \bullet H=xHx^{-1}=H \quad (\forall x \in P)\}\]
であった.
各$O \in {\rm Orb}(X)$に対し,$|O|$は$|P|=p^r$の約数なので,右辺の第二項は$p$の倍数である.したがって,$|X^{P}|=1$を示せば$|X|=n_p \equiv_p 1$を得る.
任意の$x \in P$に対し,$xPx^{-1}=P$なので,$P \in X^P$が成り立つ.次に $Q\in X^P$ を任意にとる.このとき定義より
\[
xQx^{-1}=Q\qquad(\forall x\in P)
\]
であるから,$P\subset N_G(Q)$($Q$ の正規化群)となる.
一方 $Q$ 自身も常に $Q\subset N_G(Q)$ を満たす.
ここで $Q$ はシロー $p$ 部分群なので $|Q|=p^r$ である.
また $P\subset N_G(Q)$ より $|N_G(Q)|$ は $p^r$ の倍数であるから,
\[
|N_G(Q)|=p^r \ell \qquad(\ell\in\mathbb{Z}_{>0})
\]
と書ける.すると $N_G(Q)$ の位数の $p$ 部分はちょうど $p^r$ であり,
$N_G(Q)$ の任意の $p$ 部分群の位数は高々 $p^r$ である.
ところが $P$ も $Q$ も $N_G(Q)$ の $p$ 部分群で,しかも
\[
|P|=|Q|=p^r
\]
であるから,いずれも $N_G(Q)$ の中で「最大位数の $p$ 部分群」である.
特に $P$ と $Q$ は同じ位数 $p^r$ をもつ $p$ 部分群であり,
\[
P\subset N_G(Q),\quad Q\subset N_G(Q)
\]
のもとでどちらも最大位数なので,
\[
P=Q
\]
が従う.従って $X^P=\{P\}$ であり,$|X^P|=1$ である.