Commutative Algebra and Combinatorics Seminar

可換代数と組合せ論セミナー

可換代数と組合せ論セミナーの過去の講演記録です.

過去のセミナー

各回の日時・会場・講演者・タイトル・要旨を掲載しています.

第14回

日時
2026年5月9日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館4階 3404教室
講演者
小川 将輝(東北大学)
タイトル
$\mathbb{R}\mathbb{P}^3$と$S^3$のKhovanov homologyについて

要旨

Khovanov homology は絡み目不変量として導入されて以来、絡み目の強力な不変量であるにとどまらず、4 次元空間内の曲面の分類や 4 次元多様体の研究にも応用されてきた。さらに、その背景には量子群やリー代数の表現論があり、近年ではさまざまな分野との深い関わりが明らかになっている。本講演では、古典的な $S^3$ 内の絡み目に対する Khovanov homology と、その亜種である $\mathbb{R}\mathbb{P}^3$ における Khovanov homology との関係について、最近得られた結果を紹介する。時間が許せば、Khovanov homology が braid variety と呼ばれる代数多様体からどのように現れるかについても触れたい。

第13回

日時
2026年4月18日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館4階 3404教室
講演者
吉野 聖人(東邦大学)
タイトル
格子を用いた等角直線族の研究について

要旨

等角直線族は組合せ論の分野において1950年頃から研究されており,次元を固定したときの最大本数を決定する問題が関心を集めてきた.本講演では,前半で等角直線族の基礎的な内容を紹介する.また,等角直線族へのアプローチとしては,特別な分割,半正定値計画,グラフ,スペクトラム,コンピュータ,格子などを用いたさまざまな手法が知られている.後半では,近年開発された格子を用いたアプローチについて紹介する.応用としてルート格子を用いた等角直線族の数え上げやその個数の対称性について紹介する.

第12回

日時
2025年12月13日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館3階 3304教室
講演者
柳川浩二(関西大学)
タイトル
有理数の q-変形の代数と組合せ論

要旨

任鑫氏、小木曽岳義氏、宮本賢伍氏、和久井道久氏との共同研究に基づく 正整数 n の q-類似 [n]_q=1+q+…+q^{n-1}は古典的であるが、近年 Morier-Genoud と Ovsienko は、有理数 α の q-類似 [α]_q を導入した。これは q=1 を代入すると α になる q の有理関数であるが、ある種の2-Clabi-Yau 圏、有理絡み目の Jones 多項式など、様々な話題に応用されている。[α]_q は、αの連分数展開と fence poset を用いて組合せ論的に計算できるが、モジュラー群 PSL(2,Z) の q-類似 PSL_q(2,Z)を用いても求められる。本講演では、次の3つのテーマを主として扱う。

  1. 既約分数 r/s(>0)の q-変形 [r/s]_q の「分母多項式」は q=1 を代入して s となるモニック多項式で、r/s の小数部分のみに依存するが、r r' ≡ -1 (mod s) でも r/s と r'/s の分母多項式は一致するなどやや複雑である。この種の性質を深掘りする。
  2. Leclere と Morier-Genoud は PSL_q(2,Z) の各元の trace が常に回文多項式であることを示したが、本講演では、これの別証明を与え、応用として有理絡み目の正規化 Jones 多項式の組合せ論的性質を考察する。
  3. [r/s]_q の分母多項式を S(q) としたとき、"s は4の倍数 ⇔ S(√-1))=0" であり、S(-1), S(ω)(ω は1の原始3乗根)についても同様のことが成立している。また、PSL_q(2,Z) に q=-1,ω, √-1 を代入すると有限群となる。これらをさらに深掘りする。

第11回

日時
2025年10月18日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館3階 3304教室

講演者1:西村優作(早稲田大学)

講演時間:13:30–15:00

Kneser彩色関数とツリーの完全不変量

Stanley氏は彩色対称関数と呼ばれるグラフの不変量を考案し、これがツリーの完全不変量であると予想した。この予想は現在まで未解決である。一方、三枝崎氏らは彩色対称関数を一般化したKneser彩色関数を定義した。Kneser彩色関数は自然数kによるパラメータを持っており、特にk=1の場合、これは彩色対称関数と一致する。そこで、Kneser彩色関数がツリーの完全不変量となるパラメーターkは存在するのか、という問題が考えられる。本講演では、k=2の場合、Kneser彩色関数がツリーの完全不変量となることを紹介する。本講演の前半では、Kneser彩色関数に関する結果(Miezaki-Munemasa-Nishimura-Sakuma-Tsujie)を紹介し、後半ではk=2のKneser彩色関数がツリーの完全不変量になることを証明する。

講演者2:高橋諒(東北大学)

講演時間:15:30–17:00

次数付き Artin Gorenstein 環の Lefschetz 性について

次数付き Artin Gorenstein 環は、Poincaré 双対性を持つ有限次元ベクトル空間であり、Macaulay 双対を通して多変数斉次多項式と対応する。環の適当な元による掛け算写像がフルランクを持つことを Lefschetz 性と呼び、組合せ論における Sperner の定理に代数的な証明を与えるなどの応用が知られている。本講演ではこれらの基本的な性質や、環が Lefschetz 性を持つか否かの判定方法について説明する。その後、環を定める多項式としてグラフの基底母関数を用いた場合について、コンピュータによる計算で得られた結果などを紹介する。特に、Lefschetz 性を持たない例が見つかっており、その計算手法や詳細についても述べる。

第10回

日時
2025年7月26日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館4階 3404教室
講演者
久保田絢子(埼玉大学)
タイトル
The invariant Hilbert scheme and the Cox realization of nilpotent orbit closures in sl(n)

要旨

アフィン代数多様体への簡約代数群の作用による圏論的商は一般に特異点を持つが、そうしたアフィン商多様体の特異点解消の候補の一つとしてinvariant Hilbert schemeが挙げられる。このときのinvariant Hilbert schemeの振る舞いは特異点の商多様体としての表し方に依存するため、対応するinvariant Hilbert schemeが特異点解消を与えるような表し方は何かを問うことができる。本講演ではこの問題を、特異点がそのCox環のスペクトラムへの準トーラスの自然な作用による商として記述されている場合に考察する。最初にinvariant Hilbert schemeが考えられたのは作用している簡約代数群が連結群の場合であり、主にspherical多様体などの準等質多様体のモジュライを調べるためにAlexeevとBrionによって構成された。その後、Brion によって連結とは限らない場合にもinvariant Hilbert scheme の存在の証明が拡張され、invariant Hilbert scheme が特異点解消の文脈で研究されるようになったのはこの頃からである。講演の前半ではこうした背景について説明する。後半では、Cox実現のinvariant Hilbert schemeの問題を特異点がLie環sl(n)の冪零軌道の閉包の場合に考え、対応するinvariant Hilbert schemeが特異点解消を与える例を紹介する。

第9回

日時
2025年6月7日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館4階 3404教室
講演者
辻栄周平(北海道教育大学)
タイトル
グラフ超平面配置とその変形

要旨

超平面配置とはベクトル空間の有限個の超平面からなる集まりのことである。各超平面に沿った多項式ベクトル場のなす加群が自由加群である超平面配置を自由配置という。自由性は代数的な性質であるが、超平面配置の交叉のなす半順序集合により決定される組合せ的な性質であると予想されている(寺尾予想)。本講演ではグラフから定まる超平面配置とその変形の自由性について古典的な結果から最近の話題にわたって紹介する。

第8回

日時
2025年5月10日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館4階 3404教室
講演者
長岡大(学習院大学)
タイトル
対数的デルペッツォ曲面の分類について

要旨

対数的デルペッツォ曲面とは、高々klt特異点を持ち、反標準因子が豊富である代数曲面のことである。1999年にKeel-MᶜKernan氏らにより対数的デルペッツォ曲面の分類のアルゴリズムが考案され、2024年にLacini氏により低標数を場合を除いたアルゴリズムの出力結果が得られた。本講演では、klt特異点に対して定まる双対グラフに関する性質を述べたのち、Keel-MᶜKernan氏らのアルゴリズムを説明する。

第7回

日時
2025年4月12日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館4階 3404教室

講演者1:鴻池真斗(大阪大学)

講演時間:13:30–15:00

エルハート多項式とh*多項式の根について

整凸多面体Pのエルハート多項式とは、Pを整数倍に拡大したときに含まれる格子点の個数を表す多項式である。また、エルハート多項式の母函数を考えることにより、h*多項式というものが得られる。近年、エルハート多項式のCL性やh*多項式の実根性の研究について多くの研究がされており、特に、h*多項式の実根性からは対凹性や単峰性などといった性質が従うので特に注目されている。本講演では、整凸多面体やエルハート多項式などに関する基本的な性質を説明し、その後にエルハート多項式とh*多項式の根について調べられていることについて紹介する。

講演者2:谷光一郎(大阪大学)

講演時間:15:30–17:00

ジェネリックイデアルのイニシャルイデアルとMoreno-Socías予想について

多項式環のイデアルのグレブナー基底を計算することによって得られるイニシャルイデアルはもとのイデアルの情報を多く保存しており、単項式イデアルであるイニシャルイデアルの性質を調べることでもとのイデアルの様々な性質を調べることができる。本講演では、グレブナー基底を定義し、単項式イデアルの1クラスであるlexsegmentイデアルやBorel-fixed単項式イデアルについて紹介する。また、それらの単項式イデアルが特定のイデアルのクラスのイニシャルイデアルとして実現できるかという問題として、ジェネリックイデアルのイニシャルイデアルとそれに関するMoreno-Socías予想について紹介する。

第6回

日時
2024年12月11日(水)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館3階 3304教室

講演者1:三船裕輝(名古屋大学)

講演時間:13:30–15:00

加群圏の部分圏の次元および半径について

加群圏の部分圏に対する次元および半径の概念は、過去10年の間にDaoとTakahashiによって定義されたものである。これは、三角圏におけるRouquier次元のアーベル圏における類似物として導入されたものである。特に、これら不変量の有限性に注目することで可換ネーター局所環上の有限生成加群圏の構造を解析する研究が進められている。例えば、DaoとTakahashiはpunctured spectrum上で局所的に自由加群となる極大Cohen–Macaulay加群のなす部分圏の次元有限性により、Cohen–Macaulay局所環が孤立特異点を持つことを特徴付けた。本講演ではまず加群圏における次元や半径に関する基本的な概念を説明し、次に前述のDaoとTakahashiの結果を回復するような部分圏の半径の有限性に関する結果の概要を述べる。

講演者2:大竹優也(名古屋大学)

講演時間:15:30–17:00

加群圏でのねじれ理論と近似理論

アーベル圏のねじれ理論とは, 一面的には整域上の与えられた加群をねじれ加群とねじれ自由加群の拡大で記述することの抽象化であって, GabrielやDicksonらによって1960年代に創始された. 現在では完全圏や三角圏などへ枠組みを広げ, 圏の構造解析の上で重要な役割を果たす. 他方, Auslander-SmaløとEnochsが導入した部分圏による近似の概念は, 与えられた加群の理解を"より良い"加群の理解に帰着させるものであり, Auslander-BuchweitzによるGorenstein環上の極大Cohen-Macaulay近似はその代表例である. この講演では, 極大Cohen-Macaulay近似やその双対概念である有限射影次元包絡, そしてそれらを構成する上で主要な役を担う準同型の単射表現性およびその高階化について, Lambekのねじれ理論の観点を交えた考察を紹介したい.

第5回

日時
2024年11月9日(土)13:30–17:00
会場
日本大学 理工学部駿河台キャンパス タワー・スコラ S201(2階)
講演者
松下光虹(大阪大学)
タイトル
トーリック環のconic因子的イデアルと非可換クレパント特異点解消

要旨

トーリック環上で定義されるconic因子的イデアルは非常に良い可換環論的性質を満たしている一方で、代数幾何や表現論など、可換環論にとどまらない様々な分野で重要な役割を担っている。実際、いくつかのconic因子的イデアルの直和の自己準同型環が、元のトーリック環の非可換クレパント特異点解消(NCCR)になることがある。本講演ではトーリック環とそのconic因子的イデアルに関する基本的な性質を述べたのち、conic因子的イデアルを用いたトーリック環のNCCRの構成について紹介する。

第4回

日時
2024年9月17日(火)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館4階 3404教室
講演者
前澤俊一(日本大学)
タイトル
辺着色グラフと関連する代数構造

要旨

辺着色グラフとは,各辺に1色ずつ色の割り当てられたグラフのことである.近年,グラフ理論では一般のグラフ(辺に色の塗られていないグラフ)で扱われていた問題を辺着色グラフの問題に拡張して考えるということが行われている.本講演では,辺着色グラフの基本的な定義から始め,辺着色グラフのグラフ理論的な問題とマトロイドと呼ばれるベクトルの一次独立性を組合せ論的に拡張した概念の関係性について講演する.

第3回

日時
2024年7月20日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部V号館1階 5105教室
講演者
佐藤謙太(九州大学)
タイトル
2次元特異点と純非分離拡大

要旨

代数閉体とは限らない体上の代数多様体をその基礎体の拡大体へとbase changeした時に, 特異点がどう振舞うかという問題を考える. 多くの場合, 体の拡大が分離的の場合には特異点は悪くならないことが知られているが, 非分離的の時にはしばしば特異点の様子が大きく変わる. 本講演では, 「2次元klt特異点」という特異点のクラスに関して, この問題を考える. 2次元特異点に対して定まる双対グラフの理論を中心に基礎から解説を行う.

第2回

日時
2024年6月22日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部V号館1階 5105教室
講演者
品川和雅(茨城大学)
タイトル
カードベース暗号の30年間

要旨

秘密計算とは、複数の参加者がそれぞれ秘密の入力情報(例:貯金額)を持つとき、その情報を秘匿しながら所望の計算結果(例:貯金額の平均)を得ることのできる暗号技術である。通常、秘密計算はコンピュータ上での実装が想定されるが、物理的なカード組を用いて実現できることも知られており、その研究分野をカードベース暗号と呼ぶ。この分野は1990年頃に誕生し、これまでに約30年間、特に日本を中心に研究が進められてきた。本講演では、カードベース暗号の基礎的な内容から始め、この分野の30年間の発展を紹介する。

第1回

日時
2024年5月18日(土)13:30–17:00
会場
東邦大学 習志野キャンパス 理学部III号館4階 3404教室
講演者
松井紘樹(徳島大学)
タイトル
三角圏のsupportと三角圏の幾何学

要旨

可換ネーター環上の有限生成加群のsupportとは,加群に対してZariskiスペクトラムの閉集合を対応させるものである。1962年,Gabrielはsupportを用いて可換ネーター環の有限生成加群のなすアーベル圏のSerre部分圏達をZariski スペクトラムの特殊化閉部分集合達と対応させることで完全に分類した。その後,様々な圏上の具体的なsupportの研究が盛んに行われ,特に三角圏上のsupport理論はthick部分圏の分類問題と関連して主要な研究対象となってきた.本講演では可換環論や代数幾何学に現れる様々なsupport理論と,(テンソル)三角圏のある種の普遍的なsupport理論であるBalmerのtensor triangular supportおよび講演者によるtriangular supportについて解説する。