1. 集合の言葉と記法
この節では,後の論理や集合の議論に必要となる最小限の言葉と記法を導入する.
1.1 集合
ある対象の集まりを集合 (set) といい,集合を構成する各対象をその集合の要素または元 (element) という.集合\(A\)に対象\(a\)が含まれることを \[a\in A\] と書き,含まれないことを\(a\notin A\)と書く.
要素を一つも持たない集合を空集合 (empty set) といい,\(\emptyset\)で表す.
要素が有限個である集合を有限集合 (finite set) といい,有限集合でない集合を無限集合 (infinite set) という.
1.2 集合の表現
集合に含まれる要素を波括弧\(\{\ \}\)の中に書き並べて集合を表す方法を外延的記法という.例えば,\(a,b,c\)を要素として持つ集合を \[\{a,b,c\}\] と表す.規則が明らかな場合には,\(\{0,1,2,3,\ldots\}\)のように省略して表すこともある.
\(a,b,c\)を要素として持つ集合を外延的記法で\(\{a,b,c\}\)と表す.このとき,例えば \[a\in\{a,b,c\}\] である.一方,\(d\)が\(a,b,c\)のいずれとも異なる対象ならば\(d\notin\{a,b,c\}\)である.
集合では,要素を並べる順序や同じ要素を繰り返して書くことによって集合は変わらない.例えば, \[\{1,2,3\}=\{3,1,2\}=\{1,1,2,3\}.\]
新しい記号\(A\)を,すでに意味の定まっている表現\(B\)によって定義するとき, \[A:=B\] と書くことがある.記号\(:=\)は「左辺を右辺によって定義する」という向きを明示する.定義した後は\(A\)と\(B\)は同じ対象を表すので,通常の等号\(A=B\)も成り立つ.
本書では,よく用いる数の集合を次の記号で表す. \[\begin{array}{c|l} \text{記号}&\text{表す集合}\\ \hline \mathbb{N}&\text{自然数全体の集合 }\{0,1,2,3,\ldots\}\\ \mathbb{Z}&\text{整数全体の集合 }\{\ldots,-2,-1,0,1,2,\ldots\}\\ \mathbb{Q}&\text{有理数全体の集合}\\ \mathbb{R}&\text{実数全体の集合}\\ \mathbb{C}&\text{複素数全体の集合} \end{array}\] 有理数とは整数\(a,b\)を用いて\(a/b\)と表せる数であり,分母\(b\)は\(0\)ではないものとする.また,複素数とは実数\(a,b\)を用いて\(a+bi\)と表せる数であり,\(i\)は\(i^2=-1\)を満たす数である.本書では,自然数に\(0\)を含め,\(0\in\mathbb{N}\)とする.
あらかじめ集合\(X\)が与えられているとする.\(X\)の要素のうち,ある条件を満たすもの全体を \[\{x\in X:\text{$x$が満たす条件}\}\] の形で表す方法を内包的記法または内包表記という.コロン「\(:\)」の左側には要素を表す文字を,右側にはその要素が満たす条件を書く.
\[\{x\in\mathbb{Z}:x^2<10\}\] は「整数\(x\)のうち\(x^2<10\)を満たすもの全体の集合」を表す.この集合は外延的記法では \[\{-3,-2,-1,0,1,2,3\}\] と表される.
実数\(a,b\)が\(a<b\)を満たすとする.次のように定義する. \[[a,b]:=\{x\in\mathbb{R}:a\le x\le b\},\qquad (a,b):=\{x\in\mathbb{R}:a<x<b\}.\] \([a,b]\)を閉区間,\((a,b)\)を開区間という.また, \[[a,b):=\{x\in\mathbb{R}:a\le x<b\},\qquad (a,b]:=\{x\in\mathbb{R}:a<x\le b\}\] を半開区間という.さらに,例えば \[[a,\infty):=\{x\in\mathbb{R}:a\le x\},\qquad (-\infty,b):=\{x\in\mathbb{R}:x<b\}\] と書く.記号\(\infty\)や\(-\infty\)は実数を表すものではなく,その側に端点がないことを表すための記号である.