2. 数学の論理
集合を条件によって記述したり,数学的な主張を正確に表したりするためには,論理の言葉と記号が必要になる.ここではまず,真偽が定まる主張を組み合わせる基本的な方法を学ぶ.
2.1 命題
真であるか偽であるかが定まる主張を命題 (proposition) という.命題が真であるか偽であるかを,その命題の真理値 (truth value) という.
例えば,「\(2+3=5\)」は真の命題であり,「\(2+3=6\)」は偽の命題である.一方,「\(x+1=3\)」は,\(x\)の値を指定しなければ真偽が定まらないので,このままでは命題ではない.このような変数を含む主張については,後で詳しく扱う.
命題\(P,Q\)に対して,次の命題を考える.
「\(P\)ではない」を\(P\)の否定といい,\(\lnot P\)と書く.
「\(P\)かつ\(Q\)」を\(P,Q\)の連言といい,\(P\land Q\)と書く.
「\(P\)または\(Q\)」を\(P,Q\)の選言といい,\(P\lor Q\)と書く.
ここで「または」は,\(P,Q\)の両方が真の場合も含む.
これらの命題の真理値は,\(P,Q\)の真理値によって次のように定める. \[\begin{array}{c|c|c|c|c} P&Q&\lnot P&P\land Q&P\lor Q\\ \hline \text{真}&\text{真}&\text{偽}&\text{真}&\text{真}\\ \text{真}&\text{偽}&\text{偽}&\text{偽}&\text{真}\\ \text{偽}&\text{真}&\text{真}&\text{偽}&\text{真}\\ \text{偽}&\text{偽}&\text{真}&\text{偽}&\text{偽} \end{array}\] このように,命題の真理値を場合ごとに表にしたものを真理値表という.
例えば,\(P\)を「\(6\)は偶数である」,\(Q\)を「\(6\)は\(4\)の倍数である」とする.このとき\(P\)は真,\(Q\)は偽である.したがって\(P\land Q\)は偽,\(P\lor Q\)は真,\(\lnot Q\)は真である.このように,複合命題の真理値は,もとの命題の真理値から決まる.
一つまたは複数の命題から,\(\lnot,\land,\lor\)などの論理記号を有限回用いて作られる命題を複合命題という.複合命題の真理値は,内側に現れる論理演算から順に真理値表を用いて定める.
例えば,\((P\lor Q)\land\lnot P\)の真理値を調べるときには,まず\(P\lor Q\)と\(\lnot P\)の真理値を求め,最後にそれらの連言をとればよい.