6.3:準同型定理
一般に群$G_1$と$G_2$の間の準同型写像$f : G_1 \to G_2$を与えたとき,$f$は同型写像にならない.そこで$G_1,G_2$と$f$を加工することで,$G_1$と$G_2$の「同型な部分」を見つける定理が準同型定理である. まず$G_1$を加工する.${\rm Ker}(f)$は$G_1$の部分群であったが,実は正規部分群となる.命題 6.21
${\rm Ker}(f)$は$G_1$の正規部分群である.
証明
任意の$a \in G_1$と$n \in {\rm Ker}(f)$に対して,$f(n)=e_2$であるので,
\[
f(a \circ_1 n \circ_1 a^{-1})=f(a) \circ_2 f(n) \circ_2 f(a^{-1})=f(a) \circ_2 e_2 \circ_2 f(a^{-1})=f(a) \circ_2 f(a^{-1})=e_2
\]
となり,$a \circ_1 n \circ_1 a^{-1} \in {\rm Ker}(f)$が成り立つので,${\rm Ker}(f)$は正規部分群である.
したがって,剰余群$G/{\rm Ker}(f)$が定義できる.
これが${\rm Im}(f)$と同型となることを準同型定理という.
定理 6.22 (準同型定理)
$G_1,G_2$を群とする.
任意の群準同型写像$f : G_1 \to G_2$に対し,
\[
\overline{f} : G_1 /{\rm Ker}(f)\to {\rm Im}(f);\ a{\rm Ker}(f) \mapsto f(a)
\]
はwell-definedな同型写像である.特に,$f$が全射の場合,$G_1 /{\rm Ker}(f) \cong G_2$が成り立つ.
証明
$N={\rm Ker}(f)$とする.
まずwell-defined性を見る.$aN=bN$となる$aN,bN \in G_1/N$をとる.このとき,$f(a)=f(b)$を示せばよい.$a=a \circ_1 e_1$から$a= b \circ_1 x$となる$x \in N$が存在する.
すると
\[
f(a)=\overline{f}(aN)=\overline{f}((b \circ_1 x)N)=f(b \circ_1 x)=f(b) \circ_2 f(x)=f(b) \circ_2 e_2=f(b)
\]
となり,$\overline{f}$がwell-definedであることがわかる.
また,任意の$aN, bN \in G_1/N$に対し, \[ \overline{f}(aN \ \overline{\circ_1}\ bN)=\overline{f}( (a \circ_1 b) N)=f(a \circ_1 b)=f(a) \circ_2 f(b)=\overline{f}(aN) \circ_2 \overline{f}(bN) \] が成り立つので$\overline{f}$は準同型である.
最後に$\overline{f}$が全単射であることを見ればよい.任意の$f(x) \in {\rm Im}(f) $($x \in G_1$)に対し,$\overline{f}(xN)=f(x)$であるから,$f$は全射である.$aN \in {\rm Ker}(\overline{f})$をとる.すると,\[ \overline{f}(aN)=f(a)=e_2 \] となるので,$a \in N$である.これは$a N=N$を意味する.したがって,$ {\rm Ker}(\overline{f})=\{N \}$となるので,$\overline{f}$は単射である.
以上より,$\overline{f}$は同型写像である.
また,任意の$aN, bN \in G_1/N$に対し, \[ \overline{f}(aN \ \overline{\circ_1}\ bN)=\overline{f}( (a \circ_1 b) N)=f(a \circ_1 b)=f(a) \circ_2 f(b)=\overline{f}(aN) \circ_2 \overline{f}(bN) \] が成り立つので$\overline{f}$は準同型である.
最後に$\overline{f}$が全単射であることを見ればよい.任意の$f(x) \in {\rm Im}(f) $($x \in G_1$)に対し,$\overline{f}(xN)=f(x)$であるから,$f$は全射である.$aN \in {\rm Ker}(\overline{f})$をとる.すると,\[ \overline{f}(aN)=f(a)=e_2 \] となるので,$a \in N$である.これは$a N=N$を意味する.したがって,$ {\rm Ker}(\overline{f})=\{N \}$となるので,$\overline{f}$は単射である.
以上より,$\overline{f}$は同型写像である.