7.5:対称群の共役類
対称群の\( \mathfrak{S}_n \)の共役類を調べてみよう. これらは「巡回置換型」によって完全に分類される.その準備として,巡回置換を導入する.定義 7.5.1
互いに異なる $i_1,i_2,\dots,i_k\in\{1,\dots,n\}$ に対し,
置換 $\sigma\in\mathfrak{S}_n$ を
\[
\sigma(i_1)=i_2,\ \sigma(i_2)=i_3,\ \dots,\ \sigma(i_{k-1})=i_k,\ \sigma(i_k)=i_1
\]
かつ,$j\notin\{i_1,\dots,i_k\}$ ならば $\sigma(j)=j$ によって定める.
この $\sigma$ を
\[
(i_1\,i_2\,\cdots\,i_k)
\]
と書き,長さ$k$の巡回置換という.
まずは巡回置換の逆元と互換の積の表示を求める.
命題 7.5.2
$(i_1\,i_2\,\cdots\,i_k)^{-1}=(i_k\,i_{k-1}\,\cdots\,i_1)$ である.
また,巡回置換 $(i_1\,\cdots\,i_k)$ は
\[
(i_1\,i_2\,\cdots\,i_k)=(i_1\,i_k)(i_1\,i_{k-1})\cdots(i_1\,i_2)
\]
と互換の積に分解できる.
証明
前半は定義から直ちに従う.
後半は両辺が $\{i_1,\dots,i_k\}$ 上で同じ写像になっていることを確認すればよい.
次に任意の置換は巡回置換の積で表すことができることを示す.またその表示はある種の一意性を持つ.これを表現するために,「互いに素」という概念を置換に導入する.
定義 7.5.3
$\sigma,\tau\in\mathfrak{S}_n$ が 互いに素であるとは,
\[
\{i : \sigma(i)\ne i\}\cap \{i : \tau(i)\ne i\}=\emptyset
\]
が成り立つことをいう.
互いに素な置換の積は可換となる.
命題 7.5.4
互いに素な置換 $\sigma,\tau$に対し,$\sigma\tau=\tau\sigma$が成り立つ.
証明
任意の $i$ に対して,$\sigma(i)\ne i$ なら $\tau(i)=i$,
$\tau(i)\ne i$ なら $\sigma(i)=i$ が成り立つので,
$\sigma\tau$ と $\tau\sigma$ は各点 $i$ の像が一致する.
定理 7.5.5
任意の $\sigma\in\mathfrak{S}_n$ は互いに素な巡回置換の積として表せる.特に,その表し方は,巡回置換の順序を除いて一意である.
証明
$i\in\{1,\dots,n\}$ から出発して
\[
i,\ \sigma(i),\ \sigma^2(i),\ \dots
\]
を考えると有限性より必ず循環する.この循環から巡回置換が得られ,
まだ現れていない点について同様の操作を繰り返せば,互いに素な巡回置換の積で表せる.
一意性は,各点 $i$ が属する巡回
\[
\{i,\sigma(i),\sigma^2(i),\dots\}
\]
が $\sigma$ によって一意に定まることと命題7.5.4から従う.
定義 7.5.6
正の整数 $n$ に対し,
\[
n=\lambda_1+\lambda_2+\cdots+\lambda_r
\]
を満たす正の整数の列
\[
\lambda_1\ge \lambda_2\ge\cdots\ge\lambda_r\ge 1
\]
を $n$ の分割という.
このとき,$(\lambda_1,\lambda_2,\dots,\lambda_r)$ を
$n$ の分割と呼ぶ.
例 7.5.7
$3$ の分割は
\[
(3),\quad (2,1),\quad (1,1,1)
\]
の3通りである.
$4 $の分割は \[ (4),\quad (3,1),\quad (2,2),\quad (2,1,1),\quad (1,1,1,1) \] の5通りである.
$4 $の分割は \[ (4),\quad (3,1),\quad (2,2),\quad (2,1,1),\quad (1,1,1,1) \] の5通りである.
定義 7.5.8
$\sigma\in\mathfrak{S}_n$ の巡回置換による積表示に現れる巡回置換の長さを大きい順に並べたものを
$\sigma$ の 巡回置換型という.
例えば,
\[
\sigma=(1\,5\,3) \circ (2\,6)\in\mathfrak{S}_6
\]
なら巡回置換型は $(3,2,1)$ である.
ここで,固定点は 長さ$1$の巡回置換とみなす.
それでは対称群の共役類をみていこう.これらは巡回置換型を調べることに他ならない.
定理 7.5.9
$\sigma,\sigma'\in\mathfrak{S}_n$ が共役であることと,
$\sigma,\sigma'$ の巡回置換型が一致することは同値である.
したがって,$\mathfrak{S}_n$ の共役類は巡回置換型で完全に分類される.
証明
まず$\tau \in \mathfrak{S}_n$と巡回置換$(i_1 \ i_2 \ \cdots \ i_k)$に対し,
\[
\tau \circ (i_1\,i_2\,\cdots\,i_k) \circ \tau^{-1}=(\tau(i_1)\,\tau(i_2)\,\cdots\,\tau(i_k))
\]となることを示す.
任意の$m=1,\dots,k$について,左辺の置換 $\tau (i_1\,i_2\,\cdots\,i_k)\tau^{-1}$ を $\tau(i_m)$ に作用させると,
\[
\bigl(\tau \circ (i_1\,i_2\,\cdots\,i_k) \circ \tau^{-1}\bigr)\bigl(\tau(i_m)\bigr)
=\tau\bigl((i_1\,i_2\,\cdots\,i_k)\circ \bigl(\tau^{-1}(\tau(i_m))\bigr)\bigr)
=\tau\bigl((i_1\,i_2\,\cdots\,i_k)(i_m)\bigr)
=\tau(i_{m+1})
\]
となる(ここで $i_{k+1}:=i_1$ とする).
また $j\notin\{i_1,\dots,i_k\}$ のとき,$(i_1\,\cdots\,i_k)(j)=j$ なので,同様に
\[
\bigl(\tau \circ (i_1\,\cdots\,i_k)\circ \tau^{-1}\bigr)\bigl(\tau(j)\bigr)=\tau(j)
\]
が成り立つ.
したがって,
\[
\tau \circ (i_1\,i_2\,\cdots\,i_k)\circ \tau^{-1}=(\tau(i_1)\,\tau(i_2)\,\cdots\,\tau(i_k))
\]
である.
今,$\sigma,\sigma'\in\mathfrak{S}_n$ が共役であるとする.このとき,$\tau \in \mathfrak{S}_n$を用いて,$\sigma'=\tau \circ \sigma \circ \tau^{-1}$と書ける. $\sigma$ の巡回置換による積表示を \[ \sigma=\gamma_1\circ\gamma_2\circ\cdots\circ\gamma_r \] とする(各 $\gamma_i$ は互いに素な巡回置換). このとき \[ \sigma'=\tau \circ \sigma \circ \tau^{-1} =\tau\circ(\gamma_1\circ\cdots\circ\gamma_r)\circ\tau^{-1} =(\tau\circ\gamma_1\circ\tau^{-1})\circ\cdots\circ(\tau\circ\gamma_r\circ\tau^{-1}) \] が成り立つ. すると,上で示した等式により,各$\tau\circ\gamma_m\circ\tau^{-1}$は$\gamma_m$と同じ長さの巡回置換である. したがって,$\sigma$ と $\sigma'$ の巡回置換型は一致する.
逆に,$\sigma,\sigma'$ の巡回置換型が一致すると仮定する. $\sigma,\sigma'$ の互いに素な巡回置換の積表示を \[ \sigma=\gamma_1\circ\gamma_2\circ\cdots\circ\gamma_r,\qquad \sigma'=\gamma'_1\circ\gamma'_2\circ\cdots\circ\gamma'_r \] とする.ここで各 $\gamma_i$ と $\gamma'_i$ の長さが一致すると仮定してよい. 各巡回置換を \[ \gamma_i=(a_{i,1}\,a_{i,2}\,\cdots\,a_{i,k_i}),\qquad \gamma'_i=(b_{i,1}\,b_{i,2}\,\cdots\,b_{i,k_i}) \] と書く. このとき,全単射 $\tau:\{1,\dots,n\}\to\{1,\dots,n\} \in \mathfrak{S}_n$ を \[ \tau(a_{i,j})=b_{i,j} \qquad (i=1,\dots,r,\ j=1,\dots,k_i) \] で定める. ここで,$\gamma_1,\dots,\gamma_r$ は互いに素であり, それぞれの巡回置換に現れる元は重ならないので, $\{a_{i,j}\}$ は $\{1,\dots,n\}$ をちょうど一度ずつ表す. 同様に,$\{b_{i,j}\}$ も $\{1,\dots,n\}$ をちょうど一度ずつ表す. したがって,上の対応は矛盾なく定まり, $\tau$ は置換,すなわち $\tau\in\mathfrak{S}_n$ となる. 先に示した等式より,各 $i$ に対して \[ \tau\circ\gamma_i\circ\tau^{-1}=\gamma'_i \] が成り立つ. したがって \[ \tau\circ\sigma\circ\tau^{-1} =\tau\circ(\gamma_1\circ\cdots\circ\gamma_r)\circ\tau^{-1} =(\tau\circ\gamma_1\circ\tau^{-1})\circ\cdots\circ (\tau\circ\gamma_r\circ\tau^{-1}) =\gamma'_1\circ\cdots\circ\gamma'_r =\sigma' \] となる. よって $\sigma$ と $\sigma'$ は共役である.
今,$\sigma,\sigma'\in\mathfrak{S}_n$ が共役であるとする.このとき,$\tau \in \mathfrak{S}_n$を用いて,$\sigma'=\tau \circ \sigma \circ \tau^{-1}$と書ける. $\sigma$ の巡回置換による積表示を \[ \sigma=\gamma_1\circ\gamma_2\circ\cdots\circ\gamma_r \] とする(各 $\gamma_i$ は互いに素な巡回置換). このとき \[ \sigma'=\tau \circ \sigma \circ \tau^{-1} =\tau\circ(\gamma_1\circ\cdots\circ\gamma_r)\circ\tau^{-1} =(\tau\circ\gamma_1\circ\tau^{-1})\circ\cdots\circ(\tau\circ\gamma_r\circ\tau^{-1}) \] が成り立つ. すると,上で示した等式により,各$\tau\circ\gamma_m\circ\tau^{-1}$は$\gamma_m$と同じ長さの巡回置換である. したがって,$\sigma$ と $\sigma'$ の巡回置換型は一致する.
逆に,$\sigma,\sigma'$ の巡回置換型が一致すると仮定する. $\sigma,\sigma'$ の互いに素な巡回置換の積表示を \[ \sigma=\gamma_1\circ\gamma_2\circ\cdots\circ\gamma_r,\qquad \sigma'=\gamma'_1\circ\gamma'_2\circ\cdots\circ\gamma'_r \] とする.ここで各 $\gamma_i$ と $\gamma'_i$ の長さが一致すると仮定してよい. 各巡回置換を \[ \gamma_i=(a_{i,1}\,a_{i,2}\,\cdots\,a_{i,k_i}),\qquad \gamma'_i=(b_{i,1}\,b_{i,2}\,\cdots\,b_{i,k_i}) \] と書く. このとき,全単射 $\tau:\{1,\dots,n\}\to\{1,\dots,n\} \in \mathfrak{S}_n$ を \[ \tau(a_{i,j})=b_{i,j} \qquad (i=1,\dots,r,\ j=1,\dots,k_i) \] で定める. ここで,$\gamma_1,\dots,\gamma_r$ は互いに素であり, それぞれの巡回置換に現れる元は重ならないので, $\{a_{i,j}\}$ は $\{1,\dots,n\}$ をちょうど一度ずつ表す. 同様に,$\{b_{i,j}\}$ も $\{1,\dots,n\}$ をちょうど一度ずつ表す. したがって,上の対応は矛盾なく定まり, $\tau$ は置換,すなわち $\tau\in\mathfrak{S}_n$ となる. 先に示した等式より,各 $i$ に対して \[ \tau\circ\gamma_i\circ\tau^{-1}=\gamma'_i \] が成り立つ. したがって \[ \tau\circ\sigma\circ\tau^{-1} =\tau\circ(\gamma_1\circ\cdots\circ\gamma_r)\circ\tau^{-1} =(\tau\circ\gamma_1\circ\tau^{-1})\circ\cdots\circ (\tau\circ\gamma_r\circ\tau^{-1}) =\gamma'_1\circ\cdots\circ\gamma'_r =\sigma' \] となる. よって $\sigma$ と $\sigma'$ は共役である.
例 7.5.10
$\mathfrak{S}_3$ の共役類をすべて求めてみよう.
対称群 $\mathfrak{S}_3$ の元をすべて書き出すと,
\[
1_3,\ (1\,2),\ (1\,3),\ (2\,3),\ (1\,2\,3),\ (1\,3\,2)
\]
の6個である.
それぞれの巡回置換型を調べると,
\begin{align*}
1_3 &\quad \text{型 } (1,1,1),\\
(1\,2), (1\,3), (2\,3) &\quad \text{型 } (2,1),\\
(1\,2\,3), (1\,3\,2) &\quad \text{型 } (3)
\end{align*}
となる.
したがって,定理より $\mathfrak{S}_3$ の共役類は 巡回置換型ごとに分かれ,次の3つである: \[ \{1_3\},\qquad \{(1\,2),(1\,3),(2\,3)\},\qquad \{(1\,2\,3),(1\,3\,2)\}. \] これは$3$の分割の個数と一致する.
したがって,定理より $\mathfrak{S}_3$ の共役類は 巡回置換型ごとに分かれ,次の3つである: \[ \{1_3\},\qquad \{(1\,2),(1\,3),(2\,3)\},\qquad \{(1\,2\,3),(1\,3\,2)\}. \] これは$3$の分割の個数と一致する.
例 7.5.11
$\mathfrak{S}_4$ の共役類をすべて求めてみよう.
対称群 $\mathfrak{S}_4$ の共役類は,4 の分割に対応する巡回置換型で分類される.
4 の分割は
\[
(1,1,1,1),\quad
(2,1,1),\quad
(2,2),\quad
(3,1),\quad
(4)
\]
の5種類である.
それぞれの型に属する代表元と共役類は次のようになる: \begin{align*} (1,1,1,1):&\quad \{1_4\} \\[4pt] (2,1,1):&\quad \{(1\,2),(1\,3),(1\,4),(2\,3),(2\,4),(3\,4)\} \\[4pt] (2,2):&\quad \{(1\,2)\circ (3\,4),(1\,3) \circ (2\,4),(1\,4) \circ (2\,3)\} \\[4pt] (3,1):&\quad \{(1\,2\,3),(1\,3\,2),(1\,2\,4),(1\,4\,2), (1\,3\,4),(1\,4\,3),(2\,3\,4),(2\,4\,3)\} \\[4pt] (4):&\quad \{(1\,2\,3\,4),(1\,2\,4\,3),(1\,3\,2\,4), (1\,3\,4\,2),(1\,4\,2\,3),(1\,4\,3\,2)\}. \end{align*}
したがって,$\mathfrak{S}_4$ の共役類は全部で5個であり, これは$4$の分割の個数と一致する.
それぞれの型に属する代表元と共役類は次のようになる: \begin{align*} (1,1,1,1):&\quad \{1_4\} \\[4pt] (2,1,1):&\quad \{(1\,2),(1\,3),(1\,4),(2\,3),(2\,4),(3\,4)\} \\[4pt] (2,2):&\quad \{(1\,2)\circ (3\,4),(1\,3) \circ (2\,4),(1\,4) \circ (2\,3)\} \\[4pt] (3,1):&\quad \{(1\,2\,3),(1\,3\,2),(1\,2\,4),(1\,4\,2), (1\,3\,4),(1\,4\,3),(2\,3\,4),(2\,4\,3)\} \\[4pt] (4):&\quad \{(1\,2\,3\,4),(1\,2\,4\,3),(1\,3\,2\,4), (1\,3\,4\,2),(1\,4\,2\,3),(1\,4\,3\,2)\}. \end{align*}
したがって,$\mathfrak{S}_4$ の共役類は全部で5個であり, これは$4$の分割の個数と一致する.
例 7.5.12
$\mathfrak{S}_n$の共役類の個数は,$n$の分割の個数と一致する.