情報数理C

7.4:共役な部分群と正規化群

共役の概念を部分群に拡張する.
定義 7.4.1
$G$ を群,$H$ を $G$ の部分群,$g\in G$ とする. このとき \[ gHg^{-1}:=\{ghg^{-1} : h\in H\} \] を $H$ の $g$ による共役部分群という.また部分群$K$に対し, ある $g\in G$ が存在して \[ K=gHg^{-1} \] と書けるとき,$H$ と $K$ は共役であるという.
まず部分群の共役の操作によって,その群構造が変わらないことを見る.
命題 7.4.2
$G$ を群,$H$ を $G$ の部分群,$g\in G$ とする. このとき $gHg^{-1}$ は $G$ の部分群である.さらに写像 \[ c_g:H\to gHg^{-1},\quad h\mapsto ghg^{-1} \] は同型写像である.特に,$|gHg^{-1}|=|H|$である.
証明
まず $gHg^{-1}$ が部分群であることを示す.
(H1) $x,y\in gHg^{-1}$ とする. このときある $h_1,h_2\in H$ が存在して $x=gh_1g^{-1}$,$y=gh_2g^{-1}$ と書ける.したがって \[ xy=(gh_1g^{-1})(gh_2g^{-1})=g(h_1h_2)g^{-1}\in gHg^{-1} \] となる.
(H2) $x\in gHg^{-1}$ とする.このときある $h\in H$ が存在して $x=ghg^{-1}$ と書ける. すると \[ x^{-1}=(ghg^{-1})^{-1}=gh^{-1}g^{-1}\in gHg^{-1} \] となる.
以上より $gHg^{-1}$ は部分群である.
次に,$c_g:H\to gHg^{-1}$ を $c_g(h)=ghg^{-1}$ で定める. 任意の $h_1,h_2\in H$ に対し \[ c_g(h_1h_2)=g(h_1h_2)g^{-1}=(gh_1g^{-1})(gh_2g^{-1}) =c_g(h_1)c_g(h_2) \] より $c_g$ は準同型写像である. また \[ c_{g^{-1}}:gHg^{-1}\to H,\quad x\mapsto g^{-1}xg \] が逆写像になるので,$c_g$ は全単射,よって同型写像である.
部分群の共役を考えることで,正規部分群かどうかが判定できる.
命題 7.4.3
群$G$とその部分群$N$について次は同値である:
  • $N$ は $G$ の正規部分群である.

  • 任意の $g\in G$ に対して $gNg^{-1}=N$ が成り立つ.

証明
(1)$\Rightarrow$(2): $N$が$G$の正規部分群 なら $gNg^{-1}\subset N$ が任意の $g$ で成り立つ. 両辺の位数は等しいので $gNg^{-1}=N$ である.
(2)$\Rightarrow$(1): 任意の $g$ で $gNg^{-1}=N$ が成り立つなら, 任意の $n\in N$ に対し $gng^{-1}\in N$ となるので $N$は$G$の正規部分群である.
定義 7.4.4
$G$ を群,$H$ を $G$ の部分群とする.このとき, \[ N_G(H):=\{g\in G : gHg^{-1}=H\} \] を $H$ の正規化群という.
$N_G(H)$は$H$が正規部分群になるように,$G$を小さくする操作である.
命題 7.4.5
$N_G(H)$ は $G$ の部分群であり,また$H$は$N_G(H)$の正規部分群である.
証明
まず $N_G(H)$ が部分群であることを示す.
(H1) $g,h\in N_G(H)$ とすると \[ (gh)H(gh)^{-1} =g(hHh^{-1})g^{-1} =gHg^{-1} =H \] となるので $gh\in N_G(H)$ である.
(H2) $g\in N_G(H)$ とすると \[ gHg^{-1}=H \] より \[ g^{-1}Hg=H \] が従うので $g^{-1}\in N_G(H)$ である. したがって $N_G(H)$ は部分群である.
次に $H$ が $N_G(H)$ の正規部分群であることを示す. まず $h\in H$ に対し \[ hHh^{-1}=H \] が成り立つので $h\in N_G(H)$ である. よって \[ H\subset N_G(H) \] である.特に,$H$は$N_G(H)$の部分群である. さらに 任意の$g\in N_G(H)$ に対しては \[ gHg^{-1}=H \] が成り立つ. したがって$H$は$N_G(H)$の正規部分群である.