情報数理C

7.3:共役作用

ここでは特別な作用を考える.
補題 7.3.1
$G$を群とする.このとき,写像 \[ \bullet_G : G \times G \to G, \quad (g,x) \mapsto g \bullet_G x:=gxg^{-1} \] は$G$の$G$自身への作用となる.
証明
(i) 任意の$x \in G$に対し, \[ e \bullet_G x= e x e^{-1}=x \] である.
(ii) 任意の$g,h \in G$と$x \in G$に対し, \[ g \bullet_G (h \bullet_G x)=g \bullet_G (hxh^{-1})=g(hxh^{-1})g^{-1}=(gh)x(h^{-1}g^{-1})=(gh)x(gh)^{-1}=(gh) \bullet_G x \] である.
以上より,$\bullet_G$は$G$の$G$自身への作用である.
定義 7.3.2
$G$を群とする.
  • 作用$\bullet_G$を$G$の共役作用という.また$\bullet_G$による$x \in G$の軌道を \[ C(x):=\{gxg^{-1} : g \in G\} \] と書き,$x$の共役類という.$G$の共役類全体の集合を${\rm Conj}(G)$と書く. つまり, \[ {\rm Conj}(G)=\{ C(x) : x \in G\} \] である.

  • $x,y \in G$に対して,ある$g \in G$が存在して$y=gxg^{-1}$となるとき,$x$と$y$は共役であるという.同値類の性質から,これは$C(x)=C(y)$と同値である.

共役類がどのような集合になるか,具体例を見てみよう.
例 7.3.3
対称群 $\mathfrak{S}_3$ を考える.まず単位元 $1_3$ については, 任意の $g\in\mathfrak{S}_3$ に対して $g\circ 1_3\circ g^{-1}=1_3$ であるから \[ C(1_3)=\{1_3\} \] である. 次に互換の共役類を調べる. $\tau=(1\,2)$ とし,任意の $g\in\mathfrak{S}_3$ をとる. ここで,$g\circ \tau \circ g^{-1}$ がどの元を入れ替えるかを考える. 任意の $x\in\{1,2,3\}$ に対し \[ (g\circ \tau \circ g^{-1})(g(x))=(g\circ \tau)(g^{-1}(g(x)))=g(\tau(x)) \] が成り立つので, \[ (g\circ \tau \circ g^{-1})(g(1))=g(2),\qquad (g\circ \tau \circ g^{-1})(g(2))=g(1) \] となる.また $x\neq 1,2$ なら $\tau(x)=x$ なので \[ (g\circ \tau \circ g^{-1})(g(x))=g(x) \] である. したがって $g\circ \tau \circ g^{-1}$ は $g(1)$ と $g(2)$ を入れ替え,他を固定する互換である. よって,共役類 $C((1\,2))$ は全ての互換からなり \[ C((1\,2))=\{(1\,2),(1\,3),(2\,3)\} \] である. 最後に,互換でない元を一つとり \[ \sigma= \begin{pmatrix} 1&2&3\\ 2&3&1 \end{pmatrix} \] とおく.例えば $g=(1\,2)$ とすると \[ g\circ \sigma \circ g^{-1} = (1\,2)\circ \begin{pmatrix}1&2&3\\2&3&1\end{pmatrix} \circ(1\,2) = \begin{pmatrix}1&2&3\\3&1&2\end{pmatrix} \] となり,$\sigma$ は \[ \sigma'= \begin{pmatrix} 1&2&3\\ 3&1&2 \end{pmatrix} \] と共役である.一方,$\sigma$ は互換ではないので, $\sigma$ の共役類は互換の共役類とは交わらない. 以上より \[ C(\sigma)=\left\{ \begin{pmatrix}1&2&3\\2&3&1\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1&2&3\\3&1&2\end{pmatrix} \right\} \] である. 結局,$\mathfrak{S}_3$ の共役類は \[ \{1_3\},\qquad \{(1\,2),(1\,3),(2\,3)\},\qquad \left\{ \begin{pmatrix}1&2&3\\2&3&1\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1&2&3\\3&1&2\end{pmatrix} \right\} \] の3つである.次の節で対称群の共役類について詳しく見る.
このように,共役類は群をいくつかの部分集合に分割する. では,各共役類の大きさはどのように決まるのであろうか. これを調べるために,中心化群という部分群を導入する.
定義 7.3.4
$G$を群,$x\in G$とする. \[ Z_G(x):=\{g\in G :gx=xg\} \] を $x$ の 中心化群という. また \[ Z(G):=\{z\in G: zg=gz\ \ (\forall g\in G)\} \] を $G$ の 中心という.
命題 7.3.5
中心化群は$G$の部分群であり,中心は$G$の正規部分群である.また, 共役作用に関して,任意の$x\in G$に対して, $Z_G(x)=G_x$が成り立つ.特に, \[ |C(x)|=(G:Z_G(x))=\frac{|G|}{|Z_G(x)|} \] が成り立つ. 特に,$|C(x)|$ は $|G|$ の約数である. さらに,$Z(G)=G^G$が成り立つ.
証明
部分群に関する主張は演習問題とする. $g\bullet_G x=x$ は $gxg^{-1}=x$ と同値であり,これは $gx=xg$ と同値である. よって $G_x=Z_G(x)$である.すると命題7.2.2(2)より \[ |C(x)|=|G\bullet_G x|=(G:G_x)=(G:Z_G(x))=\frac{|G|}{|Z_G(x)|} \] が従う.さらに$Z(G)=G^G$も成り立つ.
したがって,以下の等式が成り立つ.
定理 7.3.6
有限群 $G$ に対し, \[ |G|=\sum_{C \in {\rm Conj}(G)} |C|=|Z(G)|+\sum_{C \in {\rm Conj}(G), |C|>1} |C| \] が成り立つ.この等式を$G$ の類等式という.