2:イデアルと剰余環
群論では,正規部分群によって定義される商集合に群構造が入り,それを剰余群と呼んでいた.環の場合も同様に,ある種の部分構造を用いて「商集合」に環構造を入れることを考える.しかし,環の場合,部分環を用いて商集合に群構造を入れることは一般にはできない.
そこで,部分環とは異なる,もう1つの環の部分構造であるイデアルを導入する.イデアルは,剰余環を定義するために必要な条件を満たしており,群における正規部分群のような役割を果たす.
この節では,まずイデアルの定義と基本的な性質を学び,それを用いて剰余環を構成する方法について説明する.