1:環の定義
このテキストでは,自然数は$1$以上の整数とする(すなわち,$0$は含まない).また$\mathbb{N},\mathbb{Z},\mathbb{Z}_{\geq 0}, \mathbb{Q},\mathbb{R},\mathbb{C}$をそれぞれ自然数全体,整数全体,非負整数全体,有理数全体,実数全体,複素数全体の集合とする.
集合とその集合上に定義された演算との組を代数系と呼ぶ.情報数理Cでは(アーベル)群と呼ばれる代数系を学習した.簡単に言えば,(アーベル)群は「足し算と引き算ができる集合」のことである.ただし,引き算は「逆元の加法」として定義されるため,群の基本的な演算は実質的には加法の1つのみである.
本講義では,この加法に加えて掛け算を備えた集合,すなわち「足し算と引き算と掛け算」ができる集合である
環を考える.