行動生態学研究室

アフリカ類人猿の分散様式

研究概要

多くの哺乳類と異なり、アフリカ類人猿(チンパンジーやゴリラ)ではメスが生まれた集団から移籍するという特徴があります。これは父系と言われるヒトの社会に似た特徴とも考えられていました。

チンパンジーは複雄群でオスが集団に残る父系社会ですが、ニシローランドゴリラは単雄群でオスも生まれた集団を移出するため、分散様式については行動観察だけではわかっていませんでした。

DNAを用いた血縁構造の解析の結果、チンパンジーでは予想通り集団内のオス間の血縁度が高いという結果が得られましたが、ゴリラでは近隣集団のオス間の血縁度は低く、オスが遠くへ分散していることを示唆する結果が得られました。

この結果は、チンパンジーとゴリラの雄の分散様式は異なっていることを示し、ヒトの社会の進化を考える上でも重要な結果だと考えれます。

関連業績

Inoue E, Inoue-Murayama M, Vigilant L, Takenaka O, Nishida T. Relatedness in wild chimpanzees: influence of paternity, male philopatry, and demographic factors. American Journal of Physical Anthropology 137(3), pp: 256-262, 2008.
Inoue E, Akomo-Okoue EF, Ando C, Iwata Y, Judai M, Fujita S, Hongo S, Nze-Nkogue C, Inoue-Murayama M, Yamagiwa J. Male genetic structure and paternity in western lowland gorillas (Gorilla gorilla gorilla). American Journal of Physical Anthropology 151:583-588, 2013.
井上英治.DNA分析が明かす大型類人猿の分散パターン、現代思想44(22): 150-158, 2016.

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